トヨタ「bZ4X」の床下に配置されたLiB
<ジャパンモビリティショー 次世代エネ車の現在地/上>
自動車業界のトレンドを肌で感じることができる「ジャパンモビリティショー」。今回は年々多様化する次世代エネルギー車に関する技術を、自動車メーカーだけでなく電池や材料、設備を供給する企業もアピールした。普及が期待されるバッテリー式電気自動車(BEV)は市場に減速感が漂う一方で、車両の要となる車載電池の関係者からは「(需要の)いい踊り場ができ、腰を据えて開発をしっかりできる今のタイミングに進化させる」(トヨタバッテリー取締役技術本部長の八尾剛史氏)といった意欲的な声も聞かれ、性能や生産性を高める取り組みが進む。
<電池容量・生産性を向上>
自動車メーカーでは今回、トヨタ自動車が大衆車の代名詞ともいえるカローラの電気自動車(EV)コンセプトモデルを展示したほか、本田技研工業は小型SUVタイプなど「ホンダ・ゼロ」シリーズのプロトタイプ3台を披露。日本ならではの軽自動車では、スズキとBYDが軽EVをそれぞれ発表し、注目を集めた。
こうしたなか、車載電池分野からはトヨタの完全子会社であるトヨタバッテリーが出展。輪切り状態のトヨタEV「bZ4X」を展示し、搭載された車載電池を解説した。同社の八尾氏によると、旧式のbZ4Xの電池パック搭載数が96個だったのに対し、新型は104個へ増加。従来約500キロメートルだった最大航続距離は746キロメートルに拡大した。
これを支えているのが電池材料の進化だ。例えば正極材の活物質1グラム当たりの容量を増やし、セパレーターを薄肉化するなどして、電池の容量増大につなげている。セパレーターは本来トレードオフの関係にある薄肉化と安全性を両立した改良も進んでいるという。
改善の余地は電池容量だけでなく急速充電にもある。bZ4Xは150キロワットでの充電時間が約28分。これを10~15分程度まで短縮したい考え。「究極的に目指すのは“ガソリン車並み”」(八尾氏)の速さ。ただ、数分で充電を完了するためには「ブレークスルーが必要。従来の延長ではなかなか厳しい」(同)のが現状だ。
生産現場の効率化も図られている。設備面からトヨタグループの車載電池製造を支えているジェイテクトは、正・負極材の原料の混練技術を紹介した。気温などの違いが混練時に“ダマ”を発生させ品質に影響することから、電池の製造はクリーンルーム内で行われ、建屋の規模やコストも膨れやすい。同社では混練機を小型化するなどして、クリーンルーム仕様の建屋のダウンサイズを図った。スペースでは46%、製造人員では50%削減を実現。生産能力は約7倍にアップしている。
大型設備は通常、分解してコンテナ輸送する。設備を小型化したことで分解せずにコンテナに収まるようになり、「そのまま運んで据え付けできるので、早く稼働できる」(ジェイテクト担当者)というメリットも生まれた。こうした取り組みは、トヨタバッテリーが米国に完成させた新工場にも反映されているという。
ロッテグループは日本車にも部材を売り込む
<材料メーカーにも商機>
車載電池の改良ニーズは、材料メーカーにとっても商機となり得る。初出展となった韓国のロッテグループは、リチウムイオン2次電池(LiB)のセパレーターの原料となる高密度ポリエチレン(HDPE)や電解液有機溶媒、集電体用銅箔/アルミ箔を紹介した。いずれもグローバルで採用実績があることから日本企業との協業を模索する。
日本貿易機構(JETRO)などによると、昨年のEVの世界販売数は1750万台ほどで、全新車販売の約2割を占める。今後、先進国での新モデルの発売や、中国、先進国、東南アジア、南米での低価格車の普及により「今後しばらくは、グローバルで年率5%程度(市場が)成長していく」(化学メーカー)との見方が多い。車載電池では、中国系EVを中心に低コスト化が図れるLFP(リン酸鉄)系LiBに勢いがあるものの、寒冷地や航続距離といった地域ニーズへの対応を通じてニッケル系LiBとのすみ分けが進展していくとみられる。
先進国を中心とする足元のEV市場の冷え込みは、20年代前半における過剰な期待から実施した投資による一時的な供給過剰が要因と考えられる。バッテリーやその関連部材を手がけるメーカーは、実需に見合った体制へ整備・再編を進めている。