• ソリッドSiC製フォーカスリング
      ソリッドSiC製フォーカスリング
     <韓国東海カーボン、半導体の進化捉える/上>

     東海カーボン子会社で主に半導体製造装置部材を手掛ける韓国東海カーボン(TCK)が、半導体製造技術の進化を捉えて成長に弾みをつけようとしている。同社はシリコンウエハーに微細な回路の溝を掘るエッチング装置などに使われる超高純度炭化ケイ素(SiC)製品で高い市場シェアを握る。世界の半導体製造装置メーカーとの強固な関係や培った技術力を強みに次世代の技術トレンドや高度化する顧客ニーズに対応し、新たな価値を提供し続ける。

     日韓の合弁企業として1996年に設立した韓国東海カーボンは来年、創立30周年を迎える。不純物を取り除く高純度化処理を施した高純度黒鉛部材から事業をスタート。02年に東海カーボンからCVD(化学的気相成長法)と呼ぶ成膜技術を導入し、SiC膜や炭化タンタル(TaC)膜を被覆することでパーティクル(微小な異物)の発生を抑え、耐熱性などの特性も高めた特殊コート黒鉛部材や、超高純度SiC製品「ソリッドSiC」などに生産品目を拡大してきた。

     同社の売上高全体の70%以上を稼ぐ主力事業がソリッドSiCだ。高純度黒鉛部材を基板に使い、その上にCVDでSiCの厚膜を形成してから基材を取り除くことで得られる単体のSiCを、用途に合わせて加工して製品に仕上げる。SiC製のため強度や耐食性に優れた部材ができるのが特徴で、中でもソリッドSiCをリング状に加工した「フォーカスリング」が看板製品だ。

     ソリッドSiC製フォーカスリングは、韓国東海カーボンが世界で初めて開発し、14年に販売を始めた。エッチング装置内で使われ、プラズマ状態のエッチングガスをウエハーに集中させ、プラズマによる消耗から装置を保護する役割を担う。メーカー純正部品(OEMパーツ)の分野では現在も世界で圧倒的なシェアを握る。

     韓国東海カーボンがフォーカスリングで高シェアを握る理由はいくつかある。技術開発の先行者として特許網を構築。東海カーボンの田ノ浦工場(熊本県芦北町)で集中生産する特殊黒鉛素材「等方性黒鉛材」の供給を受けて、黒鉛部材の加工や高純度化処理、特殊コート処理、ソリッドSiC製品の生産といった後工程の一貫体制を取る。半導体不況下でも投資を続けてきたことで、後工程では最大級かつ最新鋭の生産設備を備え、厳格な品質管理体制も敷く。

     「世界の半導体装置メーカーとやり取りする中で、当社も顧客の目線に合う品質管理体制や、高い性能要求や急な出荷要請などに応えられる生産技術・体制を構築してきた」と、韓国東海カーボンの呉昌珉(オウ・チャンミン)社長は話す。こうした取り組みの積み重ねによって、現在では半導体製造装置メーカーの設計段階から密接に協業する「戦略的パートナー」の地位を確立。これが事業競争力の源泉となっている。

     ソリッドSiC製フォーカスリングの主戦場はデータの長期記憶に使う3次元NAND型フラッシュメモリー(3D―NAND)分野だ。3D―NANDの記憶容量を高める高積層化によって、エッチング工程では積層したチップに垂直に深く精密な穴を掘るためにエッチング回数が増え、プラズマも高出力化してきた。フォーカスリングに求められる耐久性などの要求性能も高まる中、シリコン製や石英製からソリッドSiC製に置き換える動きが進んだ。

     ソリッドSiC製フォーカスリングを原動力にして、同社の12~24年度(12月期)の年平均成長率(CAGR)は21%で推移してきた。半導体市場の減速を受けて23年度は前年割れとなるも、23年4~6月期から再び増収基調に転じ、24年度は前年度比25・6%増の306億円となった。足元の四半期売上高は好調時に近い水準まで回復しているという。
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