ハイブリッドコンデンサーを中心に増産・新機種投入が相次ぐ
<導電ポリマー、AI心臓部に商機/上>
半導体材料に続くAI(人工知能)関連の成長領域として導電性ポリマーが浮上してきた。すでにさまざまなタイプの電解コンデンサーがサーバー電源向けで活況を呈するが、このうちGPU(画像処理ユニット)などの心臓部周辺に搭載する低圧品ではポリチオフェン系材料が電解質として多用される。現状の主流を占める「PEDOT/PSS」は欧州からの原液供給に強く依存しており、一部で国内生産による改善の動きが出始めた。一方で東ソーは独自構造のポリマーで採用拡大を狙い、早ければ2026年後半からの拡大を見込む。
<コンデンサーに需要拡大の波>
AIサーバーやデータセンターへの投資が本格化して2年あまり―。需要拡大の波がコンデンサーにも及び始めた。パナソニックインダストリーや日本ケミコンなどの大手が増産計画を相次ぎ発表するなか、ポリチオフェン系材料が関わる範囲ではハイブリッドアルミ電解コンデンサーへの投資が目立つ。発表当初は車載向けが強調されたが、EV(電気自動車)市場の減速もあって足元ではAIインフラへと狙い目がシフト。低圧品としてはこれと固体型高分子アルミ電解コンデンサーの高成長が見込まれ、より小型かつ急速に性能が向上してきた積層セラミックコンデンサー(MLCC)と「競い合いながら共存していく」(材料メーカー)との見立てが聞かれる。
導電性ポリマーによる電解質層の形成にはかつてポリピロールなども用いられたが、ハイブリッド型の隆盛にともないPEDOT(3,4―エチレンジオキシチオフェン)が主流となった。製造プロセスではモノマーであるEDOTを素子に含浸させてから「その場(インサイチュ)重合」する手法もあるが、独ヘレウスがポリマーの水分散体による塗工方式を提案してハイブリッドコンデンサー製造の主流を占めるにいたった。
<地政対策リスクが課題に>
PEDOTにドーパントとしてPSS(ポリ4―スチレンスルホン酸)を加えたことで水分散を実現しており、現在ではヘレウスが原液のグローバル供給を掌握。各国に分散体メーカーが割拠する体制となった。だが地政学リスクの高まりを受け、20年代からは供給チェーンの安定化を求める声が高まる。
素材スタートアップのクレバ(東京都大田区)はこの課題に挑み、国内でPEDOT/PSS原液から分散・配合まで一貫した垂直統合型の生産体制を確立。すでに他の用途を含む実績を得て数トンレベルで量産するが、今年11月末にはデンカによる出資を受け入れて新局面を迎えた。成長確度の高いコンデンサー向けではヘレウスが分散体まで一貫した商流を握り続けるなか、クレバもAIサーバーに照準を定めてセカンドサプライヤーとして地位確立を狙う。
<前処理剤など多彩アプローチ>
一方、かねてEDOT供給を担うメーカーには既存のインサイチュ重合向けを含めて多彩なアプローチをかけられる利点があるようだ。カーリットがその代表で、詳細は非開示ながら今年12月には特性改質剤「Econ―P」シリーズを上市。PEDOT/PSSを含浸しやすくする前処理剤として提案が始まった。同社は各種コンデンサーへの間口の広さに特徴があり、ハイブリッド型の工数削減に加えて巻回タイプの固体型高分子アルミ電解コンデンサーの高耐電圧化にも照準。低損失化などに寄与していく狙いだ。
同社は10年代に進出したアルキルEDOTや旧来からのピロール系モノマーなども幅広く手がけ、電解液用の耐圧向上剤といった別のアプローチも揃える。90年代末からしばらくは自社で固体型高分子アルミ電解コンデンサーを事業化していた経験もあり、古くからコンデンサー市場に根を張る知見で材料変更の機会をすくい上げる構えだ。