• ジャガー製電気自動車をベースとするウェイモ
      ジャガー製電気自動車をベースとするウェイモ
     <米国から見る近未来/上>

     米国西海岸のカリフォルニア州の一角が「シリコンバレー」と呼ばれはじめて半世紀がたつ。いまや有名無名問わず世界のテック企業が拠点を構え、イノベーションの領域は名称の由来となった半導体から自動運転、ロボディクス、先進デバイスなどあらゆる分野へと広がりをみせる。技術・製品の進化は課題の克服を意味し、素材・部品の新たな価値を提案する機会が日々生まれており、現地に展開する日系部材メーカーは熱い視線を向ける。

     「ウェイモ、乗ってみましたか」。いま、ビジネスで米国の西海岸や南西・南部を訪れたなら、相手先からこう聞かれる機会が多いだろう。「ウェイモ(Waymo)」とはグーグルと同じアルファベット社を親会社とする自動運転車開発企業だ。こうした特定エリアの公道で無人の自動運転タクシーを試験運用している。

     記者はアリゾナ州フェニックスでウェイモに初めて乗車した。驚くべきはその操縦技術だ。加速、減速、停止、右左折といった基本操作が違和感なく繰り広げられる。同州に危険品の物流拠点を構えるNRS米国法人の佐藤祐一社長は「乗るたびにうまくなっている」と話す。

     ウェイモの車両は、屋根部分で360度検知のLiDAR(ライダー)が常時回転し、前後左右の四隅のライト付近にもLiDARやレーダーが取り付けられており、一般車両とは異なるゴテゴテした風体だ。これらの機器がウェイモの“目”となる。

     自動運転技術の上達を支えるのは今や世界的なブームと言えるAIだ。今月東京で開催されたセミコン・ジャパンで講演した名古屋大学客員教授の野辺継男氏によると、人間は運転する際、視界に入る複数の信号の優先順位や色の判断を感覚的に瞬時に行えるが、自動運転では「これを計算して行おうとすると、ほとんど不可能な計算になる」という。現状では、これらの機器から得られる情報と高精度な地図情報を連携させてAIが解析、判断して自動運転するエンド・ツー・エンド(E2E)の技術が主流になりつつあり、性能向上の研究開発が行われている状況だ。これまでルールベースで開発してきたウェイモも、グーグルのAI「ジェミニ」を活用した開発に着手した。

    • ウェイモの自動運転はストレスなく乗り心地がいい
      ウェイモの自動運転はストレスなく乗り心地がいい
     こうした瞬時の判断と動作が必要な自動運転では、車内でのデータの伝送、処理・解析はデータ量が多くても非常に低遅延で行わなくてはならない。さらに、限られたバッテリー容量のなかで電力をやりくりすることから、消費電力の低減も課題となる。カリフォルニア州サンノゼに新技術・新市場の調査研究拠点「イノベーション・コアSEI」を構える電線大手の住友電工は、そうした分野に注目している企業の一つ。従来の自動車で多用されるワイヤハーネスの次に来る技術に注目しており、「(光ファイバーなどによる)光の技術を車の中に持ち込んで自動運転の通信やインフラのアーキテクチャーを整えることが重要」(同社現地駐在員)として調査・マーケティング活動を進めている。

     野辺氏は先進運転支援システム(ADAS)のレベルが上がるにつれ、CANなどの既存の車載ネットワークに加えイーサネットが導入されていくことで、相対的にワイヤハーネスが減少すると予想する。これにより電力消費も削減される。また、電源の瞬断は事故につながる可能性があることから、野辺氏は「瞬断しないバッテリーやキャパシターが必要」と話す。ワイヤハーネスをシールドするプラスチックなどにも技術的な需要があると見る。

     ウェイモは先月、ラスベガスやデトロイト、マイアミ、ヒューストンなどでも自動運転タクシーの運用を予定していると発表した。テキサス州オースティンで米国の統括機能を担う東京エレクトロンUSホールディングスの白井浩毅社長はこの自動運転タクシーを「半導体の塊」と表し、運行都市の増加による半導体需要の裾野拡大を見通す。半導体材料を手がける田中貴金属は、先端パッケージ材料や熱マネジメントに注目して需要の取り込みを目指している。
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