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  • 化学業界「2024年問題」で団結 共同物流を加速
  • 2023年6月13日
    • 化学品サプライチェーンを途切れさせないよう効率的な物流体制構築が急がれる
      化学品サプライチェーンを途切れさせないよう効率的な物流体制構築が急がれる
     化学業界が物流で連携する。三菱ケミカルグループと三井化学が1月から共同物流の検討をはじめており、東ソーやトクヤマを始め複数の化学企業も検討に参加する。国の専門会議に設ける作業部会で具体策を練る。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に規制されることにともない、日本の輸送能力は圧縮される。ものづくりの起点となる化学品サプライチェーンを途切れさせないよう業界が団結し、川下の顧客業界とも効率化の議論に乗り出しやすくする。

     <輸送能力が大幅減>

    トラックドライバーの時間外労働は現状年平均1300時間とされ、来年4月以降、960時間が上限となる。何も対策を講じなければ、30年に輸送能力は約34%縮小するとの試算がある。ドライバー不足は深刻化し、重労働の化学品を敬遠して小口貨物に人材が流出する懸念が高まる。化学業界にとって物流改善は喫緊の課題に浮上する。

     化学各社はホワイト物流を推進し、ドライバーの手荷役作業や待機時間の削減に取り組むとともに、地域やコンビナート単位で共同物流を手がける事例が増えてきた。2社それぞれが中型トラックで同じ方面に運んでいた化学品を大型トラック1台に混載すればドライバーは1人ですむ。こうした枠組みを全国規模に広げ、往復で荷物を積めば化学品物流の効率化は一段と進む。

     <ガイドライン策定>

     そこで三菱ケミカルGと三井化学は1月、共同物流に向けた検討を開始するとともに、業界団体の石油化学工業協会の会合などで他社の参画を呼びかけてきた。経産、国交、農水の3省は今月2日、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を策定し、発荷主と着荷主に対して「共同輸配送の推進による積載率の向上」などを求めた。

     企業にとっては、物流は「非競争領域」との位置付けが明確となり、共同物流を推し進めやすくなった。三菱ケミカルGと三井化学のほかに、東ソーやトクヤマなども参加し、政府の専門会議の下にワーキンググループを設置して具体策を詰める。4社以外にも参加の意向を示す企業は複数あり、業界横断的に取り組みは広がっていく。

     <パレットを標準化>

     三菱ケミカルGと三井化学は一足早く共同物流を始める。6月から三菱ケミカルGの中京から関東エリアの輸送網を三井化学が利用し、7月からは三井化学の東北地域の輸送網を三菱ケミカルGが利用する。業界で統一されていないドラム缶用パレットのサイズを標準化し、パレット単位の輸送に代替する検討も行う。

     24年4月以降、化学品ではとくに長距離輸送への影響が予想される。1人のドライバーが一日に運べる距離は400~500キロメートルが限界となり、それを超える場合は中継在庫拠点の確保やモーダルシフトといった工夫がいる。

     両社ではケミカルタンカーを定期修理時などに融通し合う検討をしている。また、物流拠点を相互に活用して交錯輸送を解消し、輸送距離の短縮を実現する。こうした取り組みが業界に横断できれば大きな物流改善を見込める。

     <顧客と認識合わせ>

     中期的には化学品の供給先である顧客との共通認識の醸成も必要になってくる。特殊な納入条件を見直したり、過度に縮まったリードタイムの是正などが課題となる。化学品は幅広い産業に顧客を抱えており、業界の足並みが揃えば改革の方向性を見出しやすい。
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