経済産業省の伊吹英明製造産業局長は、化学産業のカーボンニュートラル(CN)実現に向けて大きな障害となっている、コンビナートでの企業間連携における独占禁止法対応について、法律やガイドラインなどで「ホワイトゾーンを明らかにする」方法も解決策の一つとして検討する考えを明らかにした。個別の案件ごとに「公正取引委員会に確認していく方法も考えられる」とし、2つの方法で解決に導いていく意欲を示した。

     化学工業日報を含む専門紙の合同インタビューで答えた。化学産業のCN実現に向けては、コンビナート全体での原燃料転換に向けて、複数社の連携が欠かせない。ただ、今年4月に公正取引委員会が公表した、「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(運用指針)では、「生産設備の共同廃棄」やそのための情報交換を「独占禁止法上問題となる」との見解を示した。そのことが化学メーカーにとって大きな懸念材料となり、CNに向けた取り組みを遅らせる要因の一つとなっている。

     <話し合いができる仕組みを>

     伊吹局長は、日本の化学業界の構造的な問題として「エチレンセンターが多すぎる」ことを指摘。その集約化に向けて、同じ地域にある企業間で「話し合いができる仕組みが必要だ」と述べた。CN実現に向けた、アンモニアなどを用いた燃料転換や二酸化炭素(CO2)や廃プラスチックを用いた原料転換は、コンビナート全体で取り組む必要があるとし、「独禁法にしばられず、企業間で話しやすくするための」環境を整備する重要性も指摘した。

     <個別案件ごとに対応図る>

     そのうえで、伊吹局長は企業間連携に対する独禁法問題の解決に向けて、2つの方法を検討することを明らかにした。一つ目は、個別案件ごとに独禁法上問題にならないように公正取引委員会に確認を取る方法で、「(企業の取り組みを)しっかりとサポートしていきたい」と述べた。伊吹局長自身、自動車課長時代に東日本大震災時の車載用半導体不足に対応。公正取引委員会と話し合い、供給量が少なくなった半導体を、震災直前の市場シェアで比例配分することを認めてもらった経験を持つ。

     <ホワイトゾーンを明らかに>

     2つ目は「ルールとして、この場合は独禁法に抵触しないというホワイトゾーンを、ある程度明らかにする」方法。「(ホワイトゾーンの規定は)法律になるか、ガイドラインになるかはわからない。ただ、これが実現できれば企業も経産省に個別相談しなくてもよくなる。(省内の)産業政策局とも相談しながら、この方法の実現も追求していきたい」と強調した。

     〔いぶき・ひであき〕1991年(平成3年)東京大学経済学部卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。12年自動車課長、17中小企業庁官房総務課長、19年内閣審議官、21年近畿経済産業局長、東京都出身、56歳。母方の祖父は、武蔵野化学研究所の社長などを歴任した高橋敏夫氏。化学業界とも縁がある。
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