• 資源循環
  • マイクロ波化学、廃プラCR小型設備を全国1000カ所に配置
  • 2023年10月2日
    • マイクロ波の照射条件などの変更で廃プラの油化とモノマー化の双方が可能(22年11月に完成したCRのパイロット設備)
      マイクロ波の照射条件などの変更で廃プラの油化とモノマー化の双方が可能(22年11月に完成したCRのパイロット設備)
     マイクロ波化学(大阪府吹田市)は2030年までに、年間処理量200~300トン規模の小型のケミカルリサイクル(CR)設備を全国に1000台配置する。セブン-イレブン・ジャパンなど小売企業や自治体と連携し、国内の廃棄プラスチックを地方分散で回収・油化する。廃プラの再資源化は数万トン級の大型装置で行うのが効率的だが、遠隔地などでは一カ所で回収することが難しい。廃プラの発生源に近い立地に高効率の小型装置を展開し、分解油の形状で石化コンビナートまで輸送するスキームが現実解とみている。

     小型装置は20フィートのコンテナに基本設備を収めることを想定する。高温、高圧が求められる通常のCRの熱分解設備と異なり、省スペースですみ、装置のパッケージ化により法令対応も簡略化できる。「マイクロ波による大型電子レンジと捉えれば、設置場所の制約も大幅に削減できる」(吉野巌社長)。

     今後、セブンイレブンなどのコンビニやスーパー、自治体などと連携して廃プラの回収スキームを構築する。小型設備は小売りの配送センターやストックポイント、地域の工業地帯の空き地など幅広く提案していく。遠隔地では廃プラを細かく選別することなくマイクロ波で油化し、運びやすくしてコンビナートの石油精製装置やナフサクラッカーに投入する。昨今は持続可能な航空燃料(SAF)原料として廃食油が奪い合いとなり「燃料向けの需要も視野」(同)に入る。

     事業化に向けたフェーズ1として、24年度には大阪事業所に年300トン級の処理装置を含めた実証設備を揃え、セブンイレブンなどが排出した廃プラを回収・油化する試験を開始する。

     フェーズ2と位置づける25~26年度は広域実証のステージに移行し、工場や中間処理業者などを候補に、特定地域に10~20台を設置する。石化企業や商社とも連携し、油化して精製設備やクラッカーでモノマー化し、再重合まで行う考え。分解データを逐次モニタリング、集中解析することにより処理量が増えるほど分解の精度が上がる自立成長型の仕組みを構築する。

     マイクロ波化学はセブンイレブンとの「小型分散型CRシステム構築の開発・実証事業」が大阪府の補助金制度に採択され、25年に開催される大阪・関西万博において、府内の一部店舗で回収した廃プラから再生したプラ製品を披露する予定。こうした取り組みを原動力に、26年以降の第3フェーズではセブンイレブンをはじめとした小売り、自治体と連携し、設備の設置や回収システムの全国展開を図る。

     同社のCRは電子レンジや通信分野で使われる電磁波で物質を直接、選択的に加熱して分解する。マイクロ波の周波数や出力、電磁界強度、または、フィラーの種類や量を変えることで、廃プラの油化とモノマー化の双方が可能となる。大阪事業所では21年9月に1時間当たり5キログラム、22年11月には1日当たり1トンの処理能力を持つ汎用CR実証設備も完成させていた。

     油化を前提に小型分散設備の展開を図る一方、数万トン規模の「大型集中化設備」の開発も並行して進める。化学工場などの敷地内への設置を想定し、CRのモノマー化技術を提供するもので、三菱ケミカルグループとはアクリル樹脂、三井化学とは軟質ポリウレタンフォーム、旭化成とはナイロン66を対象に共同技術開発を進めてきた。小型分散と大型集中型モデルを融合させることで、国内の効率的な廃プラ循環の仕組みづくりを牽引したい考え。
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