• (左から)谷口氏、玉尾氏、阿形氏、荒川氏
      (左から)谷口氏、玉尾氏、阿形氏、荒川氏
     政府は2023年度の文化勲章受章者と文化功労者を発表した。文化勲章は東京大学の谷口維紹名誉教授(分子生物学・免疫学)、京都大学の玉尾皓平名誉教授(有機合成化学・有機金属化学)ら7人に贈る。文化功労者には自然科学研究機構・基礎生物学研究所の阿形清和所長(発生生物学)、東京大学の河岡義裕特任教授(ウイルス学)、東京大学の荒川泰彦特任教授/名誉教授(電子工学)、東京大学の宮園浩平卓越教授/特別栄誉教授(生化学・分子生物学)ら20人が選ばれた。発令はいずれも文化の日の11月3日付。文化勲章親授式は同3日に皇居で、文化功労者顕彰式は同6日に都内のザ・オークラ・トーキョーで行われる。文化功労者には350万円の終身年金が支給される。また、文化勲章は文化功労者から選考される。

     玉尾氏は現在、豊田理化学研究所所長、理化学研究所栄誉研究員。日本化学会会長(12~13年)のほか、国際化学オリンピックで2度目となる日本大会(第53回、21年リモート開催)の際には日本委員会の理事長を務めた。生み出した反応では「熊田-玉尾反応」や「玉尾酸化」などが有名。また、今後の化学を支える「元素戦略」もリードした。05年に文部科学省が科学の一般社会への普及活動の一環として発行した「一家に1枚周期表」を提唱し、制作を主導、現在も版を重ねる。これをきっかけにさまざまな「一家に1枚」が制作された。

     【玉尾氏のコメント】身に余る最高の栄誉に戸惑いつつも、気を引き締め謹んでお受けしたい。1960年代半ばに京都大学工学部合成化学科で熊田誠先生のご指導を受け、京大化学研究所、理化学研究所で取り組んできたケイ素やニッケルを中心とした「有機金属化学、有機元素化学、元素科学」の研究を高く評価いただき、素直にうれしく、仲間と喜びを分かち合いたい。奉職した「自由の学風」の京大化学研究所、「科学者たちの自由な楽園、大河内精神」の理化学研究所、そして「自由研究」を掲げる豊田喜一郎氏創設の豊田理化学研究所には共通の精神があり、不思議なご縁を感じる。今後も分野を越えた若手人材育成にしっかりと取り組んでいくとともに、間もなく20年を迎える「一家に1枚周期表」の活動を中心としたアウトリーチ活動にも微力ながら力を尽くしていく。
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