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  • 欧米大手のダウやBASF、人材カギに成長
  • 2024年1月11日
    • ダウ・ケミカル日本のパトリック・マクラウド社長
      ダウ・ケミカル日本のパトリック・マクラウド社長
     化学業界が大きく変化するなか、欧米化学大手2社は「人材」を企業成長の源泉として重視し、働きやすい職場環境の構築や人材育成に力を入れている。国内でも昨年度から非財務情報の開示が義務化され、ESG(環境・社会・企業統治)情報の伝達がより重要視されている。ここでは、グローバル大手のダウやBASFの事例を紹介する。

     <働きがいでベストカンパニーに>

     米ダウは、Great Place to Work(GPTW)の「2023年版働きがいのあるグローバル企業」でベストカンパニーに選出され、従業員エンゲージメントの強化や心理的安全性の確保を通じて従業員の満足度を高めている。GPTWは世界各国で従業員の就労意識を調査し、従業員体験、信頼関係、公平で公正な職場文化を総合評価し、ダウは今年、従業員の満足度が高い企業として高評価を受けた。

     国内では22年にダウ・ケミカル日本の社長に就任したパトリック・マクラウド氏が「従業員」を重点分野の1つに位置づけ、「従業員が自ら進んでオーナーシップを発揮できるような環境を作る」とし、従業員のレジリエンスと成長マインドセットの醸成に取り組んでいる。

     近年、ウクライナ情勢や米中対立などにともなう経済の不確実性のなか、ダウは従業員の心理的安全性向上に取り組んでいる。22年に導入したウェルビーイングポータルアプリは、心身の健康や精神的安心に関するプログラムを提供。また、従業員が抱えるストレスや職場の悩みに匿名で相談できる従業員支援プログラム(EAP)を推奨し、ここ数年で利用率が増加しているという。

     これらの取り組みにより、毎年実施される従業員満足度調査では、「昨年は非常に高いスコアを記録し、厳しい事業環境の中でも今年も高水準をキープしている」(マクラウド社長)としている。

     さらに、インクルージョン、ダイバーシティ&イクイティーを重視するダウでは、10のERG(従業員リソースグループ)が、製品開発や社会問題への取り組みを活発化させている。アフリカ系をサポートするグループGAANは、アフリカ系の人々の髪質に適したヘアケアセットの開発に貢献し、タイでは花王、ワールドビジョンと連携し、児童への性教育や生理の貧困問題に取り組むプロジェクトを開始した。日本でも、社内や地域コミュニティを含め9つのERGが活動している。

    • BASFジャパンの石田博基社長
      BASFジャパンの石田博基社長
     企業成長のカギは「人材にある」と話すのはBASFジャパンの石田博基社長。世界最大の化学企業BASFは、巨大化学コンビナートを運営するフェアブント(統合生産)の考え方を日本の人材採用にも応用し、新たな挑戦を続けている。

     BASFジャパンは、13年以降停止していた新卒採用を数年前から再開した。フェアブントの思想を製品だけでなく人材にも適用し、多様で統合された人材育成プログラムを展開している。BASFは企業バリュー「CORE(創造性、オープンさ、責任感、起業家精神)」の醸成に焦点を当て、とくに日本をはじめアジア地域で将来の幹部候補生の育成プログラム「グロープログラム」に注力している。このプログラムでは、新卒者に2年間の研修を通じて、同社の幅広い事業や国際的な経験を学ぶ機会を与える。

     「11事業にもわたるBASFの事業は、複雑かつグローバル化しているため、時間をかけて当社の強みや弱みを含めた全体の理解を深めることが、顧客へのサービス提供につながる」(石田社長)としている。

     BASFジャパンでは働きがいのある職場を目指し、ダイバーシティ&インクルージョンを重視し、16カ国からの従業員が日本の文化と国際性を融合させ、多様性に富んだ組織を築いている。

     <性別や国籍を超えた多様性追求>

     さらに、性別や国籍を超えた多様性を追求し、異業種からの採用を増やす取り組みも進めている。「化学だけでなく、物理やIT、マーケティングなど多様なバックグラウンドを持つ人材を組み込んでいく」とし、今後もこれらの取り組みを通じて、「世界で活躍できるグローバル人材をBASFジャパンから輩出していく」と述べている。
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