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  • 化学大手7社の4~12月期、本格回復へ踊り場局面に
  • 2024年2月8日
    • 化学大手7社の四半期別営業利益推移
      化学大手7社の四半期別営業利益推移
     化学大手7社の2023年4~12月期の連結決算は、成長軌道への回復を前にした踊り場の様相を呈する。インフレの高止まりや金融引き締めの継続による景気低迷、市況下落によるマージン悪化などから5社で減収、最終損益も5社で減益となった。とりわけ、不動産不況に終わりの見えない中国経済がさえず、基礎素材の需要減退が鮮明。石化市況の回復は来期に向けても悲観論が大勢を占める。他方、先行して復調してきた自動車に加え、22年後半から続いてきた半導体市場の縮小には底打ち感もみられ、エレクトロニクスやヘルスケアなど機能商品群で回復の兆しを機敏につかめるか否かが24年の業績浮上の鍵を握りそうだ。

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     23年10~12月期の7社の営業利益(国際会計基準の企業はコア営業益)の合計は3670億円と、前年同期の8割の水準に留まった。主因は需要不足とそれにともなう市況の悪化で、信越化学工業は4~12月期としては3年ぶりの最終減益。米国で新築着工件数が一服し、塩化ビニル樹脂の市況が悪化した。シリコンウエハーも半導体市場の低迷でメモリー市況が下落し、顧客も多くの在庫を抱えるなか、長期契約が収益を下支えした。

     唯一最終赤字に追い込まれたのが住友化学。「石化市況の歴史的な低迷」(岩田圭一社長)に加え、上場子会社であるペトロ・ラービグの不振や住友ファーマの大幅減益が重なった。三菱ケミカルグループは石化や機能材料事業の需要低迷に直面したが、産業ガスやヘルスケアの好調で補い、前年同期にあったMMAの英工場閉鎖による減損影響も剥がれたことで1038億円と大幅増益を確保した。

     各社業績回復の足かせとなったのはやはり石化など汎用化学品だ。東ソーの石化事業は黒字こそ維持するが、「在庫受払差が悪化し、販売数量も減少した」(坂田昌繁執行役員経営管理室長)として減益を余儀なくされた。三井化学の中島一代表取締役はナフサクラッカーの稼働率について、改善傾向にあるも「24年1~3月期も80%には届かず、通年平均も7割台に留まる」と漏らす。

     旭化成、住友化学、三井化学の3社は石化関連事業の24年1~3月期の営業赤字を見込み、いずれも前期から悪化する。旭化成の堀江俊保代表取締役は「厳しい事業環境は来期も継続する」との見方を披露する。

     24年3月期の通期業績は住友化学、積水化学、旭化成、三井化学の4社が営業利益を下方修正した。三菱ケミカルGは業績予想を据え置いたが、「24年1~3月期も需要の本格回復は見通せず、スペシャリティマテリアルズやべーシックマテリアルズの事業環境は低調を見込む」(中平優子執行役最高財務責任者)。

     積水化学は住宅需要低迷で売上高、営業利益は下方修正したが、純利益は過去最高を更新する見込み。自動車生産に加えてスマートフォンの出荷も復調がみられ、高機能プラや環境・ライフラインが堅調に推移。「回復が遅れていた半導体市況も第4四半期以降で徐々に回復を見込む」(上脇太代表取締役)。

     回復の牽引役を期待される半導体市場については「想定より回復のスピードは遅い」(中島氏)との現状認識に対し、信越化学工業の斉藤恭彦社長は「デバイスの顧客の話を聞く限り、長く続いた調整局面からの復調は間近」とみて、塩ビに加え、ウエハー事業も次期投資検討を視界に入れる。

     住友化学は、ラービグや医薬品の不振にあえぐ一方、両事業を除く半導体や農薬などの機能商品事業のコア営業利益は23年4~6月期を底に期毎の回復基調を辿る。岩田社長は来期のV字回復に向けて「機能材の需要がどこまで回復してくれるか注視していく」と話す。
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