• 設備投資では人材確保の観点から既存拠点を中心に拡張する(ロングモント拠点)
      設備投資では人材確保の観点から既存拠点を中心に拡張する(ロングモント拠点)
     AGCは、ライフサイエンス部門の中核を担う医薬品の製造開発・受託(CDMO)事業で大規模投資を継続する。昨年に一時低迷した市場はすでに反転し来年以降、成長軌道に回帰する見通し。拡大する市場では競争が激化しているが、抗体医薬から先端モダリティまで幅広く手がける強みを発揮させ、商用生産だけでなく開発段階についても受託体制を強化する方針を貫き、多様な顧客を早期段階から獲得していく。このため「2027年以降も設備投資、M&A(合併・買収)両にらみで投資する」(村野忠之常務執行役員・ライフサイエンスカンパニープレジデント)方針で、さらなる次期投資を検討する。

     AGCは中計期間中、ライフサイエンス部門に1160億円を投資する計画。さらにその先も市場の成長性を踏まえ、設備投資、M&A両面で投資を狙う。設備投資の場合、人材確保などの観点から既存拠点を中心に拡張する方針。バイオCDMOでは、独ハイデルベルグや米コロラドのボルダー、ロングモントなどに充分なスペースを確保している。合成医薬CDMOは、スペインのマルグラッド拠点に空きがあり、次期投資の候補地になる。

     同社は16年に、ライフサイエンスを戦略事業に位置付け、バイオ・医農薬CDMOを中心に経営資源を厚く投じて収益の柱へと育成してきた。市場の大きな低分子や抗体医薬だけでなく、遺伝子・細胞治療やメッセンジャーRNA(mRNA)医薬、エクソソームといった先端モダリティまで幅広く対応できるのが強み。積極的なM&Aと設備投資が実を結び、近年はおおよそ年平均成長率(CAGR)15%以上と高水準で推移してきた。

     欧米の金利上昇を背景に、22年末から創薬を担うバイオベンチャーの資金調達難による不況が影響し、23年は一時的に業績が悪化した。ただ、25年以降に市場が本格的に成長軌道へ戻る見込み。23年の売上高1268億円から、26年に2000億円を目指しており、日米欧9拠点で設備増強・新設の計画を走らせている。

     27年以降は再び市場がCAGR10%程度で成長していくと予想される。同社は市場の伸びを上回る15%程度の成長を目指しており、それに合わせて継続的に生産能力を高める必要がある。成長をけん引する抗体医薬のほか、同社が得意とし今後急激な市場成長が期待できる遺伝子・細胞治療など先端モダリティにいたるまで全方位で投資を検討する。核酸やペプチドなど中分子医薬にも関心を寄せる。

     近年、利益率の高い商用生産の受託一本に絞る企業もあるが、同社は引き続き開発案件まで両輪で手がけていく方針。顧客の動向をみつつ、バランス良く投資を行い、幅広いモダリティ・フェーズを受託できる体制をとることで差別化を図っていく。

     27年以降は数年で現状比約3倍となる売上高4000億円が射程に入る見通し。さらに長期的に売上高1兆円の青写真を描く。相次ぐ新規参入で競争が激化するなか、実績による信頼性と選択肢の多さを訴求し、確固たる地位を築く。
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