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  • 三井化学、中国で熱可塑性エラストマー倍増強 26年春めど
  • 2024年4月8日
    • 中国におけるTPV表皮の占有率は9割超を誇る(上海市の三井化学功能複合塑料)
      中国におけるTPV表皮の占有率は9割超を誇る(上海市の三井化学功能複合塑料)
     三井化学は中国でオレフィン系熱可塑性エラストマー「ミラストマー」の生産能力を倍増する。2026年春をめどに、上海市の工場に押し出し設備を1系列追加する計画。電気自動車(EV)を中心に内装表皮やエアバッグカバー向けの旺盛な需要に応える。同社は内装表皮で世界シェア6割を握る最大手。中国への輸出分が減り、余力の生じる日本は、インドや東南アジア向けの供給を増やすなど成長市場での需要獲得に弾みをつける。

     上海市金山区の機能性コンパウンドの製造・販売拠点、三井化学功能複合塑料(上海)有限公司が製造能力を増強する。12年の設立以降、ミラストマーと車用燃料タンクや食品包材などに用いられる接着性ポリオレフィン「アドマー」を製造し、年産能力は計1万1000トン。このうち、ミラストマーの第2系列を導入し、日本からの輸入分を現地で賄うことでコスト低減を狙う。26年1月の試運転、4月の稼働開始を目指す。

     中国の23年の新車販売台数(輸出含む)は前年比12%増の3009万台と3年連続で増加し、初めて3000万台を突破した。EVなど新エネルギー車の比率は6ポイント増えて32%に上昇。日系企業こそ苦戦を強いられているが、三井化学はローカル含め現地の自動車OEMへ幅広く食い込み、中国の架橋品(TPV)表皮の占有率は9割超とほぼ独占状態。現地では高級志向やリサイクルニーズが拡大し、既存能力では対応できなくなっていた。

     ミラストマーはオレフィン系ゴム(EPTなど)やオレフィン系樹脂が主成分で、軟質樹脂のなかでも密度が低く軽量なうえ、成形加工性に優れるのが特徴だ。塩化ビニルや加硫ゴム代替として用いられ、用途は8割を占める自動車部品が中心。主に、内装表皮などに用いられるTPV、エアバッグカバー用の非架橋品(TPO)、17年に旭化成から買収したスチレン系のTPSを展開している。

     主力のTPVは、グループ会社のサンアロイ(千葉県袖ケ浦市)が2万5000トン能力を有し、19年には米国のグループ会社アドバンスト・コンポジッツ(ACP)にも6000トンの生産ラインを導入するなど、日米独中の世界4拠点体制を敷く。TPOはタイ、インド、メキシコで委託生産もしている。

     車載部品向け需要はコロナ禍や半導体不足で一時落ち込んだが、23年度に盛り返し、販売数量は前年比17%増と19年を超える水準を確保。24年度も米中や、インドなどアジアの堅調な需要を見込み、同12%増を見込む。

     これまで日本から中国に輸出していた玉は、インドや東南アジアに振り向ける。とりわけ、インドは経済貿易協定(EPA)で輸出に関税がかからず、また、エアバッグは運転席、助手席用に加え、側面衝突対応のサイドやカーテン用の装着義務化が予想されることから増販を計画する。
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