• 変性PPEを幅広い用途に展開する
      変性PPEを幅広い用途に展開する
     旭化成は半導体の基板材料に使われる低誘電樹脂市場への参入を目指す。低誘電の変性ポリフェニレンエーテル(PPE)を開発し、サンプルワークを進行中。2025~26年をめどに量産体制を整える計画で、国内外で立地を検討していく。高速・大容量通信分野で多くの化学メーカーが低誘電樹脂を投入し、PPE系でも後発参入となるが、低誘電特性に加えて加工性やコスト競争力なども訴求し、市場を開拓する。

     旭化成は低誘電特性や耐熱性、絶縁性などに優れる変性PPE「ザイロン」を電気・電子分野に展開する。PPE系の発泡ビーズ「サンフォース」も手がけ、電気自動車(EV)のバッテリー周りやセルホルダー、バッテリートレイなどで採用実績を持つ。昨年は3Dプリンター用の変性PPEフィラメントを市場投入するなど、優れた特性を生かして用途を広げてきた。

     新たに参入を目指すのが半導体の基板材料用途。高速・大容量、低遅延、多数同時接続の次世代通信を実現するには、伝送損失を抑制できる低誘電樹脂を基板材料に採用する必要がある。こうした新市場を狙い、JSRはポリエーテル系、信越化学工業はビスマレイミド系で市場開拓に乗り出し、ダイセルやデンカなども独自の低誘電樹脂で市場参入を計画している。

     ザイロンは一般グレードですでに優れた電気特性を持ち、誘電率2・3~2・7、誘電正接0・001~0・004を誇る。基板材料向けにチューニングし、ハンドリング性やコストパフォーマンスなどあらゆる性能に優れた低誘電樹脂として売り込む。量産設備は国内外で検討しており、能力など含め今後詳細を詰める。

     PPE系は代表的な低誘電樹脂で、SABICが市場をけん引してきた。足元では三菱ガス化学が2官能PPEオリゴマーであるオリゴフェニレンエーテル(OPE)を展開し、高性能基板用途で採用を伸ばしている。旭化成は別のアプローチで開発を進めており、2社と差別化を図っていく。

     調査会社のグローバルインフォメーションによると、低誘電樹脂市場は24年から30年の間に年平均成長率(CAGR)3・3%で成長する見込み。AIサーバーなどハイエンド市場の拡大で需要が拡大する見通しだ。
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