独メルクは今年からディスプレイソリューション部門の名称をオプトロニクス部門に変更し、光学技術を含めた幅広いソリューション提案に乗り出した。従来のディスプレイ材料に加え、光電融合などの技術開発が進む半導体市場、拡大が見込まれるAR(拡張現実)/VR(仮想現実)市場をターゲットにR&Dを加速する。オプトロニクス部門を率いるダミアン・トゥルー・エグゼクティブバイスプレジデントに戦略を聞いた。

    ▼…オプトロニクス部門に名称変更した狙いは。

     「過去50年にわたってディスプレイ材料を提供してきた。強みを再確認し、近年のマーケットトレンドである半導体とフォトニクスの融合を考えたとき、ディスプレイからオプトロニクスへスコープを広げることが重要と考えた。VR/ARは光学技術が用いられ、半導体も光電融合をはじめとする光学技術の導入が進む。わわれれの有機材料の力、光学設計技術でこうした新しいマーケットに貢献していく」

    ▼…昨年に半導体検査装置メーカーのユニティSCを買収し、オプトロニクス部門に組み入れました。

     「ユニティSCはアドバンストパッケージの検査装置などを手がけるメーカーで、ユーザーは半導体業界だが、複雑な半導体パッケージを光学技術で検査するのが一番のポイントだ。オプトロニクス部門は光を活用したソリューションを提供する組織であり、メルクが持つ光学技術と融合して、シナジーを発揮する」

    ▼…光電融合向けの取り組みはいかがでしょうか。

     「半導体部門はもちろん、オプトロニクス部門も取り組みを始めている。われわれは長年にわたって液晶材料をはじめとするさまざまな材料を開発してきた。なかには世の中に出てない材料もたくさんある。こうした材料のライブラリーの中から変調器や導波路に使える材料を探し出し、市場に投入する」

     <半導体先端技術把握し材料開発>

    ▼…半導体分野でどのような拡大戦略を描きますか。

     「半導体とディスプレイの両部門は、半導体とオプトロニクスの区分になり、互いの領域が近づいた。将来的にこの2分野はもっと融合していくだろう。半導体検査装置のユニティSCが加わったことで、半導体の先端技術がより把握できるようになり、材料開発に生かしていく」

     「AR/VRもシリコンフォトニクスも、今後どのように技術とマーケットが進むか、不確実な部分が多い。こうしたなかで強みを持つ材料化学で貢献できる領域を見つけ、ユニティSCのような検査ビジネスを経由して新しい領域の理解を深め、引き続きチャレンジしていきたい」

     <液晶材料は高付加価値の領域に>

    ▼…長年にわたって液晶材料をリードしています。

     「戦略はシンプルだ。ハイエンドプレミアムを狙っている。付加価値の高い領域に注力し、ハイエンド領域をしっかり抑える。あとはディスプレイに関するエコシステムの構築だ。テレビのブランドオーナー、モバイルメーカー、装置メーカーなどとパートナーシップを結び、われわれのポジションを築く活動を継続的に行っている。特許も強みだ。最もイノベーティブなものをいち早く開発し、特許化して守る。IP戦略もプレミアム領域の強みにつながっている」

    ▼…液晶のハイエンド領域とは。

     「車載やゲーミング、ハイエンドTVなどだ。これらの領域は高コントラストや早い応答速度などが求められる。また、足元のモバイル用ITパネルは、半導体側で大きく電力を消費するため、ディスプレイの低消費電力化が求められている。われわれはリフレッシュレートを調整しやすい材料を開発しており、低消費電力にも貢献していく」

     <有機ELでは重水素化材料に力>

    ▼…有機EL(OLED)分野はいかがですか。

     「技術的なところでは長寿命につながる重水素化材料の開発に力を入れる。もう一つはタンデム構造(パネルの2枚重ね)向けの材料開発。この2つにフォーカスしている。タンデム構造になると、2層特有の電子やホールの流れ方が生じる。われわれはホール輸送層に強く、ユーザーニーズに合わせてホールを流れやすくする、抑えるといった調整ができる」

    ▼…AR/VR市場の戦略は。

     「これから本格的に市場が立ち上がる。製薬業界に当てはめれば、今は製品を上市する前の臨床試験の段階だ。エコシステムがどうあるべきか、どのプレーヤーが何に取り組んでいるかなどマーケットを整理し、求められる材料の開発を行っている」

     「ARは光学エンジン、ウェブガイド、レンズの3つのコンポーネントに分けられる。光学エンジンはLCOS(反射型液晶)、OLED、マイクロLEDなどさまざまな方式が考えられるが、どの光学エンジンになってもわれわれは材料を提供することが可能。ウェブガイドも表面レリーフ型グレーティング(SRG)、体積ホログラムなど複数の方式があるが、それぞれで材料開発を手がける。レンズについてもレンズ材料、コーティング材料などで基礎的な開発を行っている」

    ▼…日本のエレクトロニクス産業をどうみますか。

     「日本は多くのエレクトロニクス領域でリーダーシップを取り、イノベーションをリードしてきた。われわれの日本に対するコミットメントは変わらない。リーダーシップを取る日本のメーカーとこれまで以上にコラボレーションし、パートナーシップを深めながら、新しい技術の進展に貢献していきたい」(聞き手=小谷賢吾)
いいね
電子版無料トライアル

  • ランキング(デジタル社会)