燃料電池市場が動き始めている。業務・産業用に続き家庭用エネファームも2023年度から補助金対象となり、浸透に弾みがつきそうだ。固体酸化物形燃料電池(SOFC)の基幹部品であるセルスタックを開発・製造する森村SOFCテクノロジー(愛知県小牧市)においても、これまで以上にチャンスが広がっている。佐藤美邦社長に市場認識や中長期的な展望などを聞いた。

    ▽…燃料電池市場の変化を感じますか。

     「家庭用はレジリエンスや省エネ・二酸化炭素(CO2)排出削減という観点から、エネファームにも23年度から補助金がつくようになった。国としても市場を増やしていく意向であり、そういう意味では次のフェーズに入った。25年度には家庭用に進出したい。注目すべきは以前から展開している業務・産業用で、25年度以降に向けて一緒に開発したいというお声をいただいている。SOFCは水素キャリアのアンモニアやメチルシクロヘキサンなどいろいろなガスで発電できる点が評価されているのだろう。顧客からのお声がけはこの1年で非常に増えた」

    ▽…普及期に向けた備えが必要ですね。

     「顧客から一定の注文を受けても最短の期間で供給できる準備は整えた。従来、セル前工程は設備の古い伊勢工場(三重県伊勢市)で製造していたが、効率的な大型連続炉を導入した小牧工場での製造に改めた。品質面でも顧客の要望に応えられる準備が整った。セル前工程の能力は従来の5倍増となり、コストダウンにもつながる。今すぐ5倍の能力をフルに使うのではなく、市場の盛り上がりに備えている」

    ▽…事業拡大に向けて力を入れている点はどの部分でしょうか。

     「品質追求はもちろんだが、コストダウンとソリューション開発にある。コスト面はまだまだ努力しなければならない。市場に出して、われわれが狙っていた設計がオーバースペックだと分かれば簡素化する。デジタルトランスフォーメーション(DX)にも取り組む。異常の予兆を早くつかんで工場稼働率を上げていく。後工程やシート工場の効率化も推進する。また、材料調達を幅広くみながらコストダウンにつなげていく」

     「ソリューションという観点では、燃料電池だけで生き残れる世界ではないので太陽電池や蓄電池などとの連携も模索していく。単一施策ではCO2は削減できない。さまざまな用途に応えるため製品の拡充にも力を注ぐ。セルの枚数を変えることで、顧客のニーズにより合わせることができる」

    ▽…海外市場をどうみますか。

     「30年度に売上高を450億円にする目標を立てているが、これは国内だけの数字だ。ウクライナ侵攻以降、欧州市場が変わったので当面は静観するものの、25年度以降は海外での取り組みを本格化させる。高効率な分散電源という需要は必ず存在する。将来、米国や欧州などに駐在員を置き、ビジネスチャンスをつくりたい」(聞き手=中尾祐輔)
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