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  • 新生「カーリット」、事業持ち株会社へ若手が奔走
  • 2023年12月14日
    • シン・Carlitプロジェクトの主要メンバー。左から山本氏、岩井氏、丸山氏
      シン・Carlitプロジェクトの主要メンバー。左から山本氏、岩井氏、丸山氏
     <次代の挑戦者>

     カーリットホールディングス(HD)は2024年10月、純粋持ち株会社から事業持ち株会社へと体制を変更する。10年前にいったん分離させた経営管理と事業運営を再び統合することになるが、その目的は旧に復することではない。蓄積した管理ノウハウを継承しつつ、“化学こそコア”とのコンセプトを体現していく方針だ。若手人口の多さもグループの特徴とするなか、移行実務を担うのが今年9月に発足した「シン・Carlitプロジェクト」だ。その中核を担うメンバーはどのような将来構想を持って会社の変革を主導しているのか。

     カーリットHDは来年7月、まず「カーリット」へと社名変更する。3カ月後には傘下の日本カーリットとシリコンテクノロジーを吸収合併した事業持ち株会社としてリスタートを切る予定だ。足元では販売・製造両面での許認可の移管や顧客対応などを急いでおり、約30人の若手・中堅社員からなるシン・Carlitプロジェクトがその中核を担う。

     <意思決定をスピード化>

     プロジェクトリーダーを務める日本カーリットの岩井雄大課長は「カーリットHDが培った純粋持ち株会社としての思想を維持しつつ、事業会社の“魂”を持たせるのが体制移行の目的」と強調する。

     その眼目の一つが、基礎化学品や小口径シリコンウエハーといった成長領域への設備投資など意思決定のスピードアップだ。サブリーダーとしてとりまとめを担うカーリットHD経営企画部の山本孟副課長も「外部環境が激しく変化するなかで、今後は事業を深掘りした経営判断が必要だ。当座のキャッシュアウトを恐れたり、結論を出せなくなることは、なんとしても避けなければならない」と語る。

     <資金の戦略運用に期待>

     統合新社による増強投資の判断は、例えばシリコンウエハーなどで変化が生まれそうだ。サブリーダーとして財務・金融関連を統括するカーリットHD財務部の丸山一輝副課長によれば、「シリコンテクノロジー単独の事業運営では、半導体市場の好況時に増強投資をするのが通例だった。だが半導体産業で一般的な意思決定はこれと逆であり、不況時にこそ果断な投資判断が求められる」。業容拡大のためにも、本来あるべき投資体制に近づけたいとの考えだ。

     今後は資金調達のあり方も変わりそうだ。丸山副課長は「現状の手元キャッシュは潤沢で、借り入れも積極的に活用できる財政状態にある」と指摘。山本副課長も「『お金を使わないと、お金を稼げない』時代にあって、考え方を刷新すべき」と応じる。

     <グループの一体感継承>

     そもそも統合新社の支えとなるグループ基盤は、この10年間でどう整備されたのか。シン・Carlitプロジェクトのメンバーは「最も変わったのはグループとしての一体感」と口を揃える。

     13年以前は傘下各社が独立して事業運営する気風が強かったが、持ち株会社体制への移行によってカーリットHD側からの担当者派遣などの取り組みが進展。「持ち株会社が俯瞰的にマネジメントする『組織としてのパッケージ』が整った」(岩井課長)。グループ内の相互理解が深まり、現場レベルでも他の事業会社に関心を持つ基盤が整ったという。

     岩井課長は、産業用爆薬から漂白剤・除草剤にいたる幅広い営業経験からこうも指摘する。「当社グループは工業塩の電気分解を源とするニッチ商材を多く手がけるが、対象業界の多くは交差せず、流通する言語も常識もバラバラだ。この10年で傘下各社が展開するそれぞれの市場に詳しい専門家を育てられたことも、新体制に欠かせない基盤となるだろう」と評価する。同プロジェクトで活発な議論が進むなか、将来を担う若手・中堅社員のさらなる結束に期待が持たれる。
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