各社の樹脂品をトラックに積載した共同輸送の実証実験が開始
<動き出す 化学品共同輸送/上>
化学業界に企業の垣根を越えた新たな物流手段が誕生する。持続可能な物流網の構築を目指す国のフィジカルインターネット実現会議に昨年設置された化学品ワーキンググループ(WG)の三菱ケミカルグループ、三井化学、東ソー、東レの事務局4社が共同輸送などの実証実験を9月からスタートする。共同物流をいかに実現へと導くかを追う。
化学品WGは物流の適正化や生産性を向上すべく2030年までのアクションプランを昨年12月に策定した。実証実験では各社が持つ物流データを分析し、共同輸送プラットフォームを確立するため障壁となるものを整理し今年12月までに報告書を作成する。28年度までに、化学業界全体に共同輸送を浸透させ全国展開するシナリオだ。
トラック運転手の時間外労働が4月に制限され輸送力不足が懸念されるなか、何も対策を講じなければ30年にはトラック輸送能力が約3割不足すると試算される。いわゆる「物流2024年問題」は、化学業界への影響も大きい。化学品は貨物の特性や梱包形態、重量などに特殊性があり、輸送方法や条件も多岐にわたる。これまでの個社単位での課題解決では限界が来ていた。
こうした背景のなか、化学品WGでは「商慣行の是正」「共同物流」「物流デジタルトランスフォーメーション(DX)」の3つを骨子とするアクションプランを取り決め、各社の物流を集約し輸送の最適化を図る具体的な実証段階に入る。現在、化学品WGには79社が参画している。
共同輸送は、複数の荷主の貨物を一緒の輸送形態で同じ方面の配送先へ運ぶ輸送手段だ。トラックの場合、ドライバー人数や車両台数を減らすことができ、車両から排出される二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるメリットがある。一方、集荷による時間制約や最適な輸送ルートの詮索、荷主と物流事業者の関係構築などさまざまなハードルを乗り越える必要がある。
化学品WGが実施する共同輸送の実証実験では、各社の物流データ実績を用いてシミュレーションする机上検証と、実際に貨物を積んで車両を走行させる検証の2種類を行う。
まずは机上検証として、各社の輸送データ実績を活用し、共同輸送のモデルケースを作る。9月から東レの貨物を主体に中京~北陸エリアへの幹線輸送や配送についてアルゴリズムなどを駆使し最適な輸送ルートを組み立てる。並行して、三井化学の貨物を中心に市原~東北方面への配送について共同輸送を実施しなかった場合のデメリットを、データを使い検証する。
10~11月には四日市~市原間でトラックによる走行実証を実施する。四日市では三菱ケミカルグループおよび東ソーの製品を集荷し市原まで輸送する。市原でも同様に三井化学などの製品を集荷し、四日市まで輸送する。
走行実証では主に10トン超(増トン)トラックを活用し、パレット積載の樹脂品を輸送する。ドライバーへ貸与したスマートフォンタイプの端末により収集した貨物の動態データから積載率や稼働台数、混載率などを可視化し、分析をかけ共同輸送プラットフォーム構築のための課題材料にしていく。
実証は最低でも10日間実施する。実際に顧客の貨物を輸送することで、納期に要するリードタイムや納入条件を緩和した場合にどれだけの効果が生まれるのかを探る。さらに机上検証によるシミュレーションから数値化し、どの条件がベストかを見つけ出し、そのうえでネックになる事象をあぶり出す。
例えば、納入先で車上渡しではない付帯作業が付随するなど商慣行はさまざまある。着荷主が納入時間を指定するケースや、着荷主側の荷待ち時間でリードタイムが延長するといった課題もある。「一つひとつの課題に改善策を示していく。こうした作業がないとスムーズな共同輸送は難しい」(東ソーの百合英憲購買・物流部物流グループリーダー)と指摘し、物流事業者や納入先の顧客を巻き込んだ地道な取り組みが求められる。