サムスン電子が建設中の先端半導体工場(ピョンテク市)。半導体に関わる化学材料は、国家戦略技術税額控除制度の対象になる
<変貌 韓国の投資環境/上>
【ソウル=中尾祐輔】韓国の投資環境に変化が生じている。化学産業では中国の供給過剰により基礎化学品が停滞する一方、半導体やリチウムイオン2次電池(LiB)、環境などに向けたスペシャリティケミカルに注目が集まる。とくに半導体、LiB、バイオに関わる化学材料は、国家戦略技術税額控除制度に該当しており「一般的な税額控除率より2~3倍高い」(KPMGサムジョン会計法人のベク・チョンウク常務)という。半導体材料を製造する一部の日系化学メーカーでは旺盛な需要を背景に、再投資および新規雇用を検討中であり、この制度も増強の後押しとなっている。
韓国の石油化学は厳しい局面を迎えている。政府は8月、石油化学10社に対してナフサ設備の削減を要請した。原因は中国の過剰生産だ。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の投資誘致組織・インベスト・コリアの化学産業部門プロジェクトマネジャー(PM)は「とくにエチレン生産は状況が悪い。かつてメインの輸出先は中国だった。それが近年、中国が自国で大量に生産するようになった。安価のため自国内だけでなく韓国や東南アジアにまで製品が流入している。韓国品はどうしても価格差で負ける」と語る。「そこで最近、韓国の石油化学企業はスペシャリティに移行するべく、構造改革を推進し、設備を閉鎖している状況だ。10~15年前の日本と似ている」という。
韓国の国内総生産(GDP)の稼ぎ頭である半導体市場の状況をみると、上半期は広帯域メモリー(HBM)を中心として順調に推移している。ただ、最大手のサムスン電子がHBMで不振だったことから全体の投資規模は縮小した。その一方で、HBMで存在感を示しているのがSKハイニックスであり、一部では立場が逆転したとささやかれる。DRAM市場ではSKハイニックスのシェアが上がり、サムスン電子のシェアは下がった。SKハイニックスは「HBMで世界最先端を走る」(日系化学メーカー)という。台湾積体電路製造(TSMC)と組んで米エヌビディアに納める構図は絶対的に強い。
なお、サムスン電子も7月には米テスラ向けに半導体を製造する契約を結んだことが報道され、不振が続くファウンドリー(半導体受託生産)事業の改善につながりそうだ。ピョンテク市でも先端半導体工場の建設を進めている。インベスト・コリアの半導体&ディスプレイ部門PMは「下半期には人工知能(AI)を中心とした半導体需要の回復が見込める。HBMの需要増加も市場の成長を押し上げている」といい、商機の裾野は素材を提供する日系化学メーカーにも広がっている。
具体的な投資の現場として、ソウル南方のヨンイン市で造成が進む半導体のメガクラスターだ。政府が戦略的に推し進めており、SKハイニックスとサムスン電子が主軸となってプロジェクトを担う。半導体に関わる川上の素材から川下のデバイスまでの拠点を同エリアに集める。
SKハイニックスはメモリー半導体、サムスン電子はシステム半導体で新工場を建設する。先行するのはSKハイニックスであり、すでに工事中だ。「2027年にはフェーズ1が完了見込み。サムスン電子は28年にも工事を始めるとみられる」とされ、半導体材料を供給する日系化学メーカーにもチャンスが訪れている。