中国の自動車OEMはグローバル展開を加速している。BYDはタイ工場でEV生産を本格化させた
【上海=中村幸岳】日系化学企業が中国系顧客へのスペックイン活動を強化している。近年、BYDをはじめ中国の自動車OEMは、かつての日系自動車・電気メーカーのように海外への生産進出を加速。同国企業はICT製品、レガシー半導体などの輸出も増やしている。日系化学企業は、中国発グローバル戦略品への素材供給拡大に向け、現地で中国系顧客への技術支援を拡充。特有のスピードに対応する。製品の品質・コスト両立のため、中国産原料の活用も増やしつつある。
中国の電気自動車(EV)最大手・BYDは今春、タイ東部ラヨン県に新設した工場でEVの本格生産を開始。すでに欧州などへの輸出も行っている。タイでは現状、BYDのほかMG(上海汽車傘下)、長城汽車を含む中国OEM7社がEV工場を運営。グローバル輸出拠点と位置付けている。
EVや車載電池に加え、中国はディスプレイや携帯電話、産業用ロボット、レガシー半導体、XRグラスなどの輸出も増やしている。中国海関総署(税関当局)によると今年1~8月期、ICチップの輸出額は前年同期比23%増の9051億元と大きく伸びた。チップは昨年、携帯電話を上回り中国最大の輸出品となった。自動車の輸出額も6052億元と同11%増えた。
日本の自動車・家電メーカーは長年、日本で材料や部品を認証し、グローバルに製品を輸出・生産してきた。同様に中国企業も輸出品もしくは海外生産品の材料の認証を中国国内で行っている。日本や欧州の化学メーカーはユーザーのグローバル展開に合わせ、中国系サプライヤーとしのぎを削りながら中国顧客に対するスペックイン活動を強化・拡充する構えだ。
三井化学は、ICT分野で工程材料の認証拡大を視野に入れる。同社は中国においてLSI/FPD製造用のフォトマスク防塵カバーや、半導体ウエハー表面保護テープなどで高いシェアを持つ。
また上海では来春、オレフィン系熱可塑性エラストマーの現地第2系列を稼働させる予定。EVを中心に内装表皮やエアバッグカバー向けの需要に応える。同製品は、日系に加え中国・欧米OEMへの販売も多く、ハイブリッド車を含むEV向けに拡販したい考え。
三菱ケミカルは今春、蘇州(江蘇省)で電線被覆材などに使う難燃コンパウンドの生産能力を増強。中国自動車市場でシェア7割を占める中国系OEMに食い込むため、技術サポート体制も強化する。同社は自動車部品用素材やディスプレイ材料について、コスト競争力の高い中国産素材を使いこなし、自社加工技術で差別化することも焦点に据える。
そのほか日系エンプラメーカーも中国を拠点に、海外に生産進出する中国自動車OEMへの製品供給や技術支援を強化したい考えだ。
中国系ユーザーがグローバル市場で存在感を高めるなか、日系企業は現地での生産・技術サービス体制に磨きをかけ、顧客が求める品質とコスト、スピードに関する要請に着実に応えたい考えだ。