• 環境課題
  • FCJ、PFAS制限案「SDA理論」基に再評価を
  • 2023年9月28日
  •  フッ素化学品メーカーが加盟する日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)は、欧州化学品庁(ECHA)が実施する有機フッ素化合物(PFAS)制限案に関するパブリックコメント(意見公募)への第4弾の意見書を22日に提出した。今回は京都大学化学研究所の長谷川健教授が確立したPFASの性質を解明する「SDA(階層双極子アレー)理論」に基づき、PFAS規制を一括で論じるべきではないことを訴え、そのエビデンス(科学的根拠)を示した。

     FCJはこれまで意見書の提出を通じて、今回のPFAS制限案が欧州REACH規則の要件を満たしていないこと(第1弾)、規制案の中で中間体の扱いが曖昧であること(第2弾)、PFAS全体の濃度制限を「25ppb(10億分の1)」とすることの妥当性が欠けていること(第3弾)などについて指摘、主張してきた。

     意見書の第4弾は、3カ月がかりで準備を進めてきた。SDA理論をベースに、長谷川教授と国立環境研究所の中山祥嗣次長の共同文献も参考にしながら、PFASの規制はフッ素特有の物理化学を用いて再検討すべきと指摘する。

     また科学的な情報として、FCJの有識者が集めた毒性に関する情報も提供した。PFASの中で炭素数(C)6~18のパーフルオロカルボン酸に焦点を当て、物性が大きく異なるため一括での議論がなじまない点や、これらの物性の違いはSDA理論を当てはめることで説明できることを示した。

     FCJは「生体内の状況がわかっていない部分や、C6~C18以外にも多くの種類のPFASがあり、今回の意見書で提供した情報が強いエビデンスになるかといえばまだ十分ではなく、疫学関連の情報も盛り込みもっと検討を広げていく必要がある」という。

     一方で、「(SDA理論という)突破口がある中で、欧州に対して今一度立ち止まって考え直すべきだと主張することも重要と考えて提出した。われわれの意見書が注目されることでSDA理論をグローバルに広める契機にもなるし、今後追加で出てきた技術情報と合わせて主張できる」とする。

     PFAS制限案へのパブコメは今月25日で締め切られた。FCJとしての今後の活動はECHAの取り組みに呼応していくことがベースとなる。

     ECHAのリスク評価専門委員会(RAC)と社会経済分析専門委員会(SEAC)の議論がまとまった段階で行われる次回のパブコメに対応するほか、ECHAや欧州の関係者との直接対話や、欧州化学工業連盟(CEFIC)をはじめ業界団体との連携も積極的に進めるという。さらに日本政府の力も借りながら「政府レベルでの交渉や調整」にも期待する。

     また長谷川教授がユニット長を務める京都大学の研究連携基盤持続可能社会創造ユニットでもPFASのSDA理論の展開がテーマとなっている。同ユニットは、多くの学部から人材を集め、産学が連携し検討を加速する考え。FCJとして、疫学関連のデータも踏まえた評価など、物性面の影響だけでなく、ヒトへの健康影響とセットで検討する取り組みに協力していく考えだ。
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