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  • ENEOSなど、古紙由来バイオエタノール事業化へ
  • 2024年4月22日
    • ラベル離型紙などの難再生古紙や工場で生じる端材などの損紙を原料とする
      ラベル離型紙などの難再生古紙や工場で生じる端材などの損紙を原料とする
     ENEOSとTOPPANホールディングス(HD)は、2030年代に年産数万キロリットル規模で、古紙を原料とするバイオエタノール製造の事業化を目指す。再生紙へのリサイクルが難しい古紙を原料とし、持続可能な航空燃料(SAF)や化学品など多様な製品に転換できるバイオエタノールを国内製造する。高効率化や大規模化によるコスト低減を進め、バイオエタノール製造ルートの一つとして確立する。

     ENEOSは燃料油や化学品の原料となる基幹物質としてエタノールを重要視する。食料と競合しない製造法を求め、セルロースからエタノールを製造する糖化発酵技術を開発してきた。セルロースの原料としては、木材から作るパルプなどのほか、まとまった量を回収しやすい古紙に着目。不純物となるインクやフィルムに関し、加工業者としての知見を持つTOPPANとタッグを組んだ。TOPPANは社内外の古紙の有効活用を狙う。

    • ラベル離型紙
      ラベル離型紙
     26年度に古紙からエタノールを製造するパイロットプラントを稼働する。商業機の1段階手前の位置づけだ。1日当たり1~3トンの古紙を投入し、約300リットルのエタノールを製造する。建設候補地は非公表ながら、ほぼ選定ずみという。連続生産プロセスの稼働の安定性などを検証する。TOPPANがグループ内で原料を確保し、不純物を取り除く前処理工程を担う。ENEOSは容量数千リットルの培養槽で、精製されたセルロースを糖化発酵する技術に磨きをかける。

     30年代には両社共同でスケールアップした商業機の稼働を目指す。年間数万キロリットル規模でのエタノール製造をまかなう原料は、「十分確保できる見込み」(TOPPAN)。TOPPANグループの工場で生じる損紙に加え、フィルムやアルミ箔が張り合わされた紙、カーボン紙といった難再生古紙を市中から回収して投入する想定。段ボールや新聞紙などを中心とする「既存の紙リサイクルと競合する意図はない」(同社)という。

     商業機で作るバイオエタノールは、まずはSAFなどの原料に使うことを想定する。発酵プロセスで生じる二酸化炭素(CO2)は大気放出せず回収する。現時点では既存サプライチェーンと「製造コストにかなりの乖離がある」(ENEOS)が、大規模化で一定のコスト低減を期待する。通常は焼却処分される原料を使う環境貢献価値の訴求も欠かせない。将来的には、技術ライセンスを含め、国内外で多様な事業展開の可能性が見えてきそうだ。

     両社は20年ごろから事業化に向けた検討を重ねてきた。前処理工程では、古紙を水に溶いて不純物を取り除く。再生紙向けのパルプよりも高い純度が求められる一方で、過剰な精製はコストの増加につながるため、前処理で何をどこまで取り除くか、実証での見極めが鍵となる。

     後工程では、酵素によるセルロースの分解と酵母による糖の発酵を1つの培養槽で進める。培養液からは、非加熱の分離手法で連続的にエタノールを取り出す。グルコースだけでなく、五炭糖のキシロースをもエタノールに転換できる特殊な酵母を使い、通常よりエタノール収量を1~2割高められる。ENEOSが遺伝子組み換えによらない手法で独自開発した酵母であり、遺伝子組み換え生物への規制を受けることなくプラントを展開できる。
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