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  • ペロブスカイト太陽電池、社会実装加速へ導入目標
  • 2024年4月8日
    • 発電効率15%を達成している積水化学のペロブスカイトPV
      発電効率15%を達成している積水化学のペロブスカイトPV
     経済産業省は、次世代太陽電池であるペロブスカイト太陽電池(PV)の事業化を支援する。2024年度中に改定するエネルギー基本計画の検討にあわせ、ペロブスカイトPVの導入目標を策定する方向だ。具体的な需要創出に向けて、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)やフィードインプレミアム制度(FIP制度)に新たな発電設備区分を設けることも検討する。2050年のカーボンニュートラル(CN)の実現に向けては、電源構成に占める再エネの割合を増加させ、主力電源化することが必須となる。そのカギを握るのがペロブスカイトPVで、官民で需要を喚起することで社会実装を後押しする狙い。

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     ペロブスカイトPVは、シリコン型太陽電池に比べ、薄くて軽く、しなやかに曲げられるため、従来設置が困難だった屋根や壁面などに導入できる。太陽電池については、日本はすでに平地面積当たりの導入量で主要国1位であり、設置場所の不足が指摘されている。そこで再エネのさらなる拡大に向け、設置対象が幅広いペロブスカイトPVへの期待が高まっている。また、ペロブスカイトPVの主原料であるヨウ素は、日本が世界の生産量シェアで3割を占める。CNだけでなく、経済安全保障の観点からも、日本が社会実装をリードすべき技術といえる。

     経産省はペロブスカイトPVの社会実装に向け、24年度中にも政府としての導入目標を策定する方向だ。24年度は電源構成を決めるエネルギー基本計画の改定年度に当たり、25年3月までに第7次エネルギー基本計画が策定される予定。新計画では、再エネの主力電源化に向け、電源構成に占める太陽光発電の割合を、現行目標の30年の14~16%からどのくらい引き上げるかが議論の焦点の一つとなる。太陽光の導入拡大にはペロブスカイトPVの普及がカギを握るため「導入目標とエネルギー基本計画の策定はセットになるだろう。新たなエネルギー計画にしっかりとインプットできるよう導入目標を検討していく」(経産省幹部)としている。

     導入目標は、政府のGX実現に向けた「分野別投資戦略」に明記した「20年代年央100メガワット/年規模、30年を待たずにギガワット級の量産体制構築」を前提に検討する。

     政府がペロブスカイトPVの導入目標を定め、まずは公共施設に率先して導入し、需要を喚起することで、企業が予見性を持って生産体制を整備できるようになると期待されている。

     また、需要創出策の一つとして、再エネのFITおよびFIP制度に、ペロブスカイト太陽電池に特化した区分を設ける方針だ。24年度から経産省の有識者会議「調達価格等算定委員会」で本格的に議論に着手する。買取価格は未定だが、経産省のグリーンイノベーション(GI)基金事業で定めた技術目標「30年までに1キロワット時当たり14円以下、中間目標として25年度までに同20円を見通せる」が議論のたたき台になる見込み。ペロブスカイトPVをFIT・FIP制度で優遇し、大規模需要を創出することで、大量生産によるコスト低減効果が期待されている。
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