SUMCOは10年後に売上高の倍増を目指す。足元は半導体市場の調整局面が続くが、ロジック、メモリーともに2024年からの回復を見込む。市場の回復に加え、半導体の微細化によってシリコンインターポーザーやウエハーの貼り合わせといった新たな用途が広がり、シリコンウエハーの需要は従来のスピード以上に拡大する見通し。倍増の先には専業メーカーで売上高1兆円が視界に入る。

     橋本眞幸会長兼CEOは「過去10年で売上高は倍増した。10年後も倍増が見込める」と話す。同社の13年1月期の通期売上高は2066億円で、22年12月期は同4410億円。10年間で売上高は2・1倍に拡大した。10年後は売上高9000億円前後がターゲットとなる。

    • 橋本会長兼CEO
      橋本会長兼CEO
     半導体は厳しい市場環境が続く。従来のシリコンサイクルは、約1年が調整期間の目安だったが「ここまで長く、深い停滞は初めて。とくにメモリーの落ち込みが大きい」。橋本会長は理由として「今回の深い谷は作られたものだからだ」と指摘する。コロナ禍や米中摩擦、ウクライナ問題が重なったことで、半導体の特需が生まれ、大きな反動減が今も続いているという。

     落ち込みの浅いロジックは24年前半に回復し、メモリーも24年後半の回復を見込む。ともに25年から本格的に市場が回復し、以降は自然なシリコンサイクルに戻ると予測する。

     市場の回復以上にシリコンウエハーの需要は拡大する見通しだ。背景にあるのはウエハーの用途の拡大。通常の半導体チップの用途に加え、チップとパッケージ基板をつなぐ中継部材のシリコンインターポーザーの需要増を見込む。そのほか、ウエハー同士を貼り合わせる技術開発が進み「ウエハーの使用量は倍になる」。

     こうした状況を見据え、佐賀県吉野ヶ里町に新工場の建設を決めた。国の「供給確保計画」に認定され、最大で750億円の助成金が交付される。佐賀県伊万里市と長崎県の国内2工場のほか、台湾工場でも増産投資が進む。

     半導体市場の浮き沈みが激しいのは「成長市場だからこそ。成長し続けるから落ち込んでも、また需要が回復する」。売り上げ倍増には成長市場の取り込みが欠かせず、橋本会長は「投資判断だけは見誤ることができない」と気を引き締める。成長に沿って市場規模は大きく膨らみ、半導体の微細化への対応も加わり、投資負担が大きく跳ね上がっているからだ。市場を読み、地政学リスクにも対応し、成長市場の中心に居座り続けることで、シリコンウエハー専業での売上高1兆円も見えてくる。
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