• 水酸基のユニットが分子間力により近づくことで長鎖アルキルが凝集し撥水性を発揮
      水酸基のユニットが分子間力により近づくことで長鎖アルキルが凝集し撥水性を発揮
     <ケミマテ’23>

     日油は、有機フッ素化合物(PFAS)フリーで撥水性を付与できるモノマーを提案する。長鎖アルキル変性モノマーで、重合により分子内に持つ水酸基の凝集ユニットが疎水性を示す長鎖アルキルの間隔を狭く密な状態とするため、従来品と比べて高い撥水効果を発揮する。水酸基の修飾による応用も可能。ポリマーとしての提供にも応じる。紙や繊維、革製品などの用途で高まりつつあるPFAS代替ニーズに応えていく。

     植物由来原料で分子設計した長鎖アルキル変性モノマー「ブレンマーHU-SP」は、長鎖アルキルを持つ従来のステアリルメタクリレートを改良した。(1)重合(2)高凝集(3)長鎖アルキル-の各ユニットで構成しており、ポリマー化すると凝集ユニットの水酸基同士が分子間力の働きで近接することにより側鎖の水を弾くアルキル基も密に凝集し、撥水性が高まる。凝集ユニットを持たない従来のステアリルメタクリレートはアルキル鎖の間隔が広く、水が侵入しやすい。水酸基の高凝集ユニットの導入により「フッ素の撥水性に近づけた」(同社)としている。

     ホモポリマーとしての評価では、ガラス転移温度(Tg)はステアリルメタクリレートの38度Cに対し、ブレンマーHU-SPは47度Cだった。水酸基および長鎖アルキルの凝集による効果で、撥水性を裏付けるデータだとしている。

     それぞれのポリマー溶液をろ紙上に塗布し乾燥させた後、水を滴下し水の形状を比較したところ、ステアリルメタクリレートの塗工紙に比べ、ブレンマーHU-SPの塗工紙は高い撥水性を示した。また滑落角の試験として、ポリマーのコート紙を角度を調節できる板に張り付け、100ミリグラムの水滴を高さ5センチメートルから滴下して水滴が垂れる最小角度を調べた。その結果、ステリルメタクリレートは60度、ブレンマーHU-SPは30度だった。より小さい角度で水滴が垂れたことから、ブレンマーHU-SPは良好な撥水性を示すとしている。

     水酸基を修飾して物性を変化させたり新機能を付加できる。「非フッ素の撥水剤として単独でも機能を出せるし、目的に合わせて別のモノマーと組み合わせて新しい特徴も出せる」(同社)。水酸基の架橋による塗膜強度の向上などの応用も可能だ。

     今年4月の組織改正で、機能性モノマー「ブレンマーシリーズ」を手がけていた油化事業部は化成事業部と統合、機能材料事業部としてシナジー創出に取り組んでいる。このため、ニーズに合わせてブレンマーHU-SPをポリマー化して提供することにも対応する。

     足元では「フッ素系添加剤などへの問い合わせは減少傾向にある」と、欧州化学品庁(ECHA)のPFAS制限案の影響が出ている。一方、撥水モノマーの展開分野である紙、繊維、靴などの革製品向けのスプレーやコーティング製品の関連ユーザーからは、ブレンマーHU-SPへの問い合わせが増加しているという。
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