<次代の挑戦者>

     「半導体の永遠の課題を解決すべく常に動いている」と、リンテックのアドバンストマテリアルズ事業部門事業企画部の根本拓課長代理は話す。半導体関連のテープや装置、プロセスに関わる開発営業、マーケティングに携わる。技術での差別化が重要なビジネスであり、自社技術をどんな方向に持って行くかという知財面も合わせ製品開発、営業・販売の戦略を組み立てる。「新たなテーマやキーワードに即応し、社内で何ができるかを見つけ掘り下げる。歯車の中心となってプロジェクトを動かすのがわれわれチームの役割」と自認する。

     <UV硬化型開発>

     主力商品であるチップ裏面保護テープ「LCテープ」を中心に、12~13のテーマを抱える。

     LCテープはスマートフォンやパソコン、モバイル機器などに使われる「ウエハーレベルチップスケールパッケージ(WLCSP)」と呼ぶ半導体パッケージでチップの裏面保護に使われる。緻密な特許網が強い武器となっていることに加え、テープとテープ貼り付け装置をセットで提供する戦略と相まって、競合のいないまさにオンリーワン商品だ。

     それでもなお改良を続けている。スペックにより7種類ほど揃えるが、既存の熱硬化タイプに加え、新たに紫外線(UV)硬化を採用し、新機能も追加した「UV-LC」タイプを開発した。

     一般に裏面保護テープの熱硬化時間は130度Cで2時間程度、昇温や硬化後炉から取り出せる温度に冷ます時間も含めると3時間~3時間30分かかり、多くのエネルギーを消費する。これに対しUVは1分以内で硬化し、UV-LEDを使うことでさらに省電力化が可能。半導体チップの熱負荷を軽減し省エネなど製造工程のサステナブル化ニーズにも対応できる。

    • 半導体パッケージでチップの裏面保護に使われるLCテープはリンテックの独壇場だ
      半導体パッケージでチップの裏面保護に使われるLCテープはリンテックの独壇場だ
     半導体大手の1社から徐々に採用が広がったLCテープ。根本氏が台湾に赴任した時期は、半導体パッケージング工程のOSAT(後工程請負会社)への水平分業が始まるタイミングと重なった。テープのエンジニアと、OSATでの工程立ち上げに注力した。「多様な半導体パッケージの組み立て・検査を行うOSATをサポートするため、われわれも営業、技術、日本側の工場、研究開発、装置の開発、製造部門を含めたチームで取り組んだ」と振り返る。

     <常に技術を磨く>

     仕事の姿勢で常に意識するのは「基本的に顧客のすべての要求に応える」こと。そこには「顧客のしっかりとしたニーズがある」ためだ。一度解決しても、新製品や市場の変化で新たな壁が立ちはだかり課題は永遠に続くが、テープはもちろん装置も含め細かな要望も拾い上げ実現していく。それが自ずとシェアの維持・拡大につながると考える。

     半導体市場は昨年来、需要低迷の影響を受けているが、これまでの約40年間平均9%の伸びが続き、今後も成長が見込まれる。「われわれがやるべきことはシェアの維持・拡大に向け技術を磨くこと」と、顧客やエンドユーザー視点で新たな機能・特性を付加した製品の拡充を思案する。

     <剥離の最適解へ>

     次のチャレンジとして、「剥離」に関する取り組みも進めている。リンテックはチップを切削する際の保護テープとして加工中は高い粘着力を有し、加工後は簡単に剥がせるUV硬化型のダイシング(切断)工程用テープやバックグラインド(裏面研磨)工程用表面保護テープなども揃える。今後は「UVとは別のトリガーで易剥離すること」を目指す。

     ますます微小化・薄型化が進むチップ・ウエハーに対し、テープの剥離のしやすさをどのように確保するか。「UV以外のトリガーも検討しなければ『テープは限界』とのレッテルを貼られてしまう」と、最適解を導き出す提案の準備を進める日々だ。テープの剥離性向上は装置やプロセスの改良がメインだが、その実現に不可欠な製品として自社の材料を組み込むことで、「営業がいなくても自動的に材料が流れていく」ことが理想の姿。「よい結果も出ており、オンリーワン製品となる可能性がある」と期待を込める。

     <バトンをつなぐ>

     大学時代は情報科学部コンピューター科学科でPCのシステムやプログラミングなどを学んだが、全く違う方面に進もうとリンテックに入社した。アドバンストマテリアル事業部門以外には行かないと志望を出して以来、17年間半導体業界一筋。「思えば自分ひとりでやったことでできたことは一つもなく、助けてもらった先輩、後輩には感謝しかない」と振り返る。

     何気ないメールのやり取りや会話の中で新たなキーワードが出てくると、世界中の前線にいる仲間が声をかけてくれたり、最新の情報を提供してくれる。「こうしたネットワークを嬉しく思うとともに、そこには新たなビジネスのヒントが隠されている」と話す。

     自称「根っからの会社好き」のこれからのテーマが「会社の歴史の中で、後輩たちにさまざまな財産のバトンをつないでいくために何ができるか」。根本氏はこれを「われわれの青春を生きるか」と表現し、事業部の中堅世代で集まり話し合っている。「自分たちのためでもあるが、延長線上にいる全ての後輩・部下たちが主役。ステークホルダーもいる中で、主役の明るい未来のためという一点で同じ方向を見据えていきたい」。

     今は関係のある国内外の企業から聞いた面白い取り組みの中から、良いテーマを探し少しずつ取り組もうとしている。「われわれ世代が悩み、楽しみながら時間を注いでいきたい」。10年くらいかけて取り組んでいけば、これがベースとなり「もっとチャレンジングなことにもスピーディに動くことができる」と熱く語る。
いいね

  • ランキング(デジタル社会)