• 資源循環
  • 住友系3社、ゴムのケミカルリサイクル技術でタッグ
  • 2023年11月16日
     住友理工と住友ゴム工業、住友電気工業の住友系3社がケミカルリサイクル(CR)の技術開発でタッグを組む。米ランザテックと共同で、廃棄物を一旦ガス化して一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、水素(H2)を取り出したうえで微生物の代謝を利用してゴム原料のイソプレンなどの有用物を得る技術の確立を目指す。

     3社協業により「入り口(廃棄物の回収量)」と「出口(再生品の種類)」の両方を広げることでCRの効率化、コスト削減を図り、サーキュラーエコノミー(CE)の実現をたぐり寄せる。ゴム業界全体や自治体との連携といった仲間づくりも積極的に検討する。

     樹脂や金属はCR技術の開発が進んでいるが、ゴムは生産の過程で不可逆的な化学反応である「加硫工程」がありCRは不可能とされてきた。住友理工の担当者は「他の材料でのCR進展にともないゴムの存在がクローズアップされ、メーカーとして危機感を覚える」と話す。

     住友理工は2022年11月、ゴム廃棄物などのCR技術の確立に向けてランザテックと共同開発契約を結んだ。ランザテックは微生物によるガス発酵技術の開発を手がけており、持続可能な航空燃料(SAF)や化学品の量産を始めるなど世界中から注目されている。住友理工も「(ランザテックは)パイロット設備のスケールアップや大型プラントの運用ノウハウを持っていることが魅力」と話す。

     微生物からのイソプレン生産はランザテックもまだ経験のない世界初の取り組みだが、住友理工は「ゴム原料に戻すことに大きな価値がある」と挑戦に強い意欲をみせる。まず基礎研究から始めているが、当初のロードマップ通り進んでいるという。技術開発の主体はランザテックだが、住友理工の基盤材料開発研究所が取り組んできた要素研究や基礎研究で蓄積したノウハウも生かし一緒に議論しながら進めている。

     一方、社会実装を実現するには、住友理工で発生する廃棄物だけでは十分でなく、ゴム材料でCEの仕組みを単独で構築するのは難しい。このためゴムの最大用途であるタイヤを手がける住友ゴム、ゴムのほか樹脂や金属も扱いCEに高い意識を持つ親会社の住友電工にも声をかけ、住友系3社協業で進める。

     20年代後半にパイロット設備を開発、30年代前半の社会実装を想定する。前段のガス化工程は国内での技術開発も進んでおり、一般的な自治体のごみ焼却場などに導入されている日量数十~数百トン規模で設備が最適化されている。一方で、後段の微生物発酵は変換効率で設備規模や生産量が決まるため、さまざまなケーススタディを行う必要がある。

     社会実装の段階についても、廃棄物量が1日10トン、100トンか、その時のガス化効率はどうなるか、また変換効率に応じてシミュレーションを行いイソプレンの生産量や運用コストなどを試算。3社でターゲットとする廃棄物量などを協議している。設備は段階的にスケールアップしていくが、「さまざまな可能性から最適解を考えることができるのもわれわれの強み」(同)。

     <「ゴムの再生」も確立へ>

     3社協業で廃棄物の量は3倍以上に増えるが、まだ十分ではなく、さらに入り口を広げる必要がある。すべてガス化するため、廃棄物の種類は問わない。廃棄自動車に載っている部品や部材をそのまま回収することも一案。「求めているのはガスなので、対象を一般廃棄物や産業廃棄物に広げられることもメリット」(同)。ただ、自社廃棄物のように素性の明らかなもの以外が混ざると、ガス化の比率や燃焼効率も変わるため、工程管理で制御するか、ガス生成後の後工程の管理で対応するかの検討も必要になる。

     ゴムのリサイクルに困っている企業やメーカーは多く、将来広く集める仕組みを構築できればリサイクル量も増やせ、世の中に与えるインパクトも大きいと考える。プロセス開発の進捗を踏まえつつ、ゴム業界や工場近隣の自治体など「CEの仲間を広げる議論も積極的に検討していきたい」(同)。

     これまでのリサイクルはできるだけマテリアルリサイクル(MR)を行い、対応できないものをCRする流れだが、「40~50年代には、ほぼすべてCRの世界になる」(同)と予想する。

     とくにゴムは不可逆反応をともなうためMRは基本的に元の商品より価値が下がる「ダウンサイクル」にならざるを得ず、最初の使い道はあっても広がりは期待できない。「当然、MRにも取り組むが、長期的にはCRにシフトしていく必要がある。ただ選択肢は多い方が良いので、今のうちからバイオ由来材料などにも取り組みつつ、CRの比率を高めていく」方針だ。
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