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  • 住化、LCPコンパウンド長繊維複合材でEV開拓
  • 2023年12月1日
    • LCP/GFの長繊維コンパウンドをハニカム形状に加工した
      LCP/GFの長繊維コンパウンドをハニカム形状に加工した
     住友化学は、液晶ポリマー(LCP)とガラス繊維(GF)や炭素繊維(CF)の長繊維フィラーのコンパウンドを開発し、電気自動車(EV)向けの採用を目指す。独自の樹脂配合技術やコンパウンド技術を活用したもので、GF複合品はLCPの持つ機械特性や耐熱性を維持したまま、高い衝撃吸収性能を発揮するのが特徴。クラッシュボックスなどへの展開を想定したサンプルワークを始め、量産検討にも着手した。マグネシウム合金を超える剛性を有する射出成形用LCP系CFコンパウンドの開発にもめどをつけ、金属部材の置き換えを狙う。

     「スミカスーパーSCG-379」は、LCP/GFからなる長繊維コンパウンド。ガラス長繊維強化ポリプロピレン(PP)「スミストラン」で培った技術などを展開した。破壊時エネルギー吸収性能に優れ、シャルピー衝撃強度はマグネシウム合金より高く、一部のアルミニウム合金とも遜色ない。LCPの高い流動性を生かした複雑なハニカム形状で試験したところ、単位重量当たりのエネルギー吸収量は既存のアルミニウム合金や鋼板製部材と比べ、優れた結果が得られた。

     アルミニウム合金比20~30%の軽量化が可能で、加えて落錘衝撃試験では、破壊時に破片の飛散が少なく、周囲への攻撃性が低いことも確認された。破断面形状が鋭利にならないことからクラッシュボックスなどへの採用に適しているとみている。早期の採用を目指し、生産立地を含めた量産検討にも入った。

     SCG-379を用いた平板を難燃部材としても提案する。LCPはもともと難燃性に優れ、成型品に長繊維が含まれることで難燃性をさらに向上できる。2ミリメートル厚の平板の表面を1100度C、10分の条件で接炎した試験では貫通穴がなく、裏面への影響がほぼ見られなかった。高い耐炎性を生かし、電池カバーなどバッテリー周辺部材に提案する。

     短繊維、長繊維の2種類を揃えるLCP系CFコンパウンドは自動車の金属部材の置き換えを目指し、レーシングカー部品での性能評価を進めている。フロントアップライトは鋼鉄製品に対して45%、ブレーキローターベルはアルミニウム合金に対し約35%の軽量化を実現。ともにマグネシウム合金と同等の剛性も備えている。

     モーター駆動部の絶縁部材であるインシュレーターには通常、アラミドなどの絶縁紙が用いられる。CFコンパウンドは高い耐電圧性、強度と剛性を発揮し、射出成型による形状設計自由度が高いといった優位性を発揮できるとみて、その特徴を訴求する。
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