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  • 三井化学、大阪工場CN構想に道筋
  • 2023年12月8日
    • 160万トンのCO2排出量をゼロに(大阪工場)
      160万トンのCO2排出量をゼロに(大阪工場)
     三井化学は、大阪工場(大阪府高石市)のカーボンニュートラル(CN)構想を具体化する。ナフサクラッカーの温室効果ガス(GHG)削減に向け、原料転換では2024年初の熱分解油のクラッカー投入をはじめ、バイオナフサに加えバイオディーゼルなどの活用も検討する。来年度にはアンモニアを燃料化する専焼炉の建設チームも組織し、26年度の1万トン規模の試験炉の詳細設計に入る。近隣の大阪ガスやENEOSと連携した二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯蔵(CCUS)も急ぎ、CO2回収装置の設置なども検討する。

     大阪工場をモデルとしたCN構想を掲げており、(1)燃料転換(2)原料転換(3)CCUS-の技術を総動員することで、50年に同工場のCO2総排出量160万トンをゼロにする。

     現在16基ある分解炉の熱分解燃料をすべてメタンからクリーンアンモニアへ転換すると70万トンのCO2削減効果がある。同社は26年度までに1万トンの試験炉を設け、30年度までに数万トン規模の実証炉を少なくとも1基導入する計画。双日マシナリーが進めるバーナーの技術開発に合わせ、三井化学も24年度から建設検討班を立ち上げて試験炉の設計に着手する。

     クラッカーの原料転換ではバイオマス原料や廃プラ由来の熱分解油を導入することで20万トンのCO2排出削減を図る。バイオマスナフサは21年12月の3000トンの導入を皮切りにこれまで1万トン超を輸入し、今後はバイオディーゼルなどの利用も併せて検討する。

     他方、24年1~3月期をめどに廃プラをケミカルリサイクル(CR)した熱分解油をクラッカーに原料投入する。廃プラの油化事業を手がけるCFP(広島県福山市)から年間数千トンを調達し、マスバランス方式を用いてグリーンケミカルに誘導する。マスバランスによるCR由来誘導品の製造は国内初となる。

     大阪では今年、5000トンのアンモニアタンクの開放点検用に予備タンクを新設した。夏場のプロパンが安い時期はクラッカー原料としてプロパンの利用を拡大する方針で、原料多様化と石化由来ナフサの使用削減につなげる狙い。

     クラッカーに加え、ボイラーやアンモニア製造などさまざまな箇所から排出される残り70万トンのCO2については、近隣企業との連携によるCCUSで削減する。三井化学はアンモニア事業で培ったCO2の回収技術を活用し、場内のCO2を回収・液化して液化CO2に変換する。大阪港湾部ではENEOSが調達したグリーン水素とCO2から、大ガスがメタネーションしたeメタンを都市ガスに転換する構想が立ち上がる。三井化学は原料として液化CO2を供給する。プロジェクト大規模化に向け、大型のCO2回収装置の建設なども計画する。

     CO2を地下貯留するCCSは現時点で具体的方策はないが、大ガスとも連携しながら海外輸出を含めその可能性を模索する。
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