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  • iPEACE223、エチレンからバイオプロピレン
  • 2023年12月20日
    • 独自のゼオライト触媒により、プロピレンを高収率で生産
      独自のゼオライト触媒により、プロピレンを高収率で生産
     三菱ケミカルが開発したゼオライト触媒技術の実用化を目指して今夏に立ち上がったiPEACE223(アイピーストゥトゥスリー、東京都中央区)はエチレンからプロピレンを直接製造する技術の2030年近傍の社会実装を目指す。バイオエタノールを出発原料にグリーンプロピレンを製造するもので、24年中にも数十トンのベンチプラントを設計・建設し、触媒プロセス開発やプラントプロセス設計を急ぐ。ラボスケールでは90%の高いプロピレン収率を達成ずみで、石化メーカーなどへのライセンス供与を視野に入れる。石化由来品と比べ二酸化炭素(CO2)排出量は3割程度削減出来ると見込む。

     同社は今年8月に設立されたスタートアップ。バイオエタノールを脱水したエチレンをプロピレンに誘導し、さらに燃料プロパンやポリプロピレン(PP)へ展開するスキームを想定。チャバサイト(CHA)型のゼオライト触媒を用い、エチレンからプロピレンを直接製造可能な「エチレンtoプロピレン(ETP)」反応の開発に取り組む。

     味の素出身で有機合成が専門の樋口量一氏を最高経営責任者(CEO)に据え、最高技術責任者(CTO)には現三菱ケミカル・エグゼクティブフェローで、三菱ケミカルでETP技術を開発した瀬戸山亨氏が就いた。東京工業大学科学技術創成研究院ナノ空間触媒研究ユニットの横井俊之准教授が最高戦略責任者(CSO)として触媒開発に加わる。

     何度でも繰り返し使用可能な触媒再生技術も特徴だ。触媒は通常、使用にともない有機物が堆積して劣化するため反応効率が悪くなる。従来は酸化反応で燃焼させる空気再生が採り入れられてきたが、蒸気による構造崩壊(永久劣化)が生じるのが課題だった。同社は水素を利用した触媒再生技術を見いだし、繰り返し使用出来ることを確認。設備稼働率向上が期待できる。

     ゼオライト触媒と水素化除去による触媒再生技術は三菱ケミカルが特許を保有。ETPは三菱ケミカルにてラボでの数千時間の連続反応に成功し、90%程度の収率を達成した。今後、iPEACE223でスケールアップのステージに入り、今年度中の運用開始を目指し、東京工大すずかけ台キャンパス内にラボを建設中だ。

     24年末までにベンチプラントを建設し、26年末頃までに触媒開発およびスケールアップによるプロセスデータを取得する。28年頃には数千トンのパイロット設備を設けて実証試験を始めたい考え。30年近傍の実用化を果たす。

     ETPで製造したプロピレンは燃料用にはそのまま使えるが、PPなどに誘導する場合は蒸留設備が必要で、既存の石化メーカーとの連携も視野に入る。30年近傍の社会実装の段階では大型のバイオエタノールtoエチレン設備に隣接して数万トン規模のETP設備が立ち上がるのが現実的な選択肢とみており、石化メーカーへの技術供与や共同事業体(JV)を組んでのプロジェクト参画など事業モデルを模索する。

     このほど、ユニバーサルマテリアルズインキュベーター(UMI)が運営するUMI3号投資事業有限責任組合とUMI3号脱炭素投資事業有限責任組合から資金調達を実施した。会社の立ち上げ資金や東工大のラボの整備などに充てる。今後はベンチプラントの建設などに向けて、さらなる資金調達も計画する。

     経済産業省の調べでは、日本の化学産業の19年のCO2排出量は6018万トンで、その5割超をC2~C8の基礎化学品生産が占める。12・5%を占めるエチレンはバイオエタノールtoエチレンなどの技術確立が進む一方、プロピレン(10・5%)についてはCO2排出量の少ない新たな製造プロセスが求められている。同社は、燃料添加剤などとして市場に1億トンが普及しているとされるバイオエタノールを原料に、グリーンな燃料(LPG)や化学品原料となるプロピレンへ誘導することでエネルギーや化学品のカーボンニュートラルに貢献していく。
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