• 機能性材料
  • 三菱ケミカルG、「水に浮く」発泡性PBT樹脂 25年央めどに量産
  • 2024年2月2日
    • 比重が1・0を下回るため、開発品を用いた成形品は水に浮く。右は一般PBTの成形品
      比重が1・0を下回るため、開発品を用いた成形品は水に浮く。右は一般PBTの成形品
     三菱ケミカルグループは、成形品の軽量化に貢献する発泡性のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を開発した。特殊な成形機や化学発泡剤を用いたドライブレンド作業が不要になるのが特徴で、樹脂ペレットを射出成形機に投入するだけで、通常のガラス繊維強化系PBTのおよそ半分、比重1・0を下回る「水に浮く」エンプラ成形品を製造できる。自動車の機構部品の金属代替や電気制御ユニット(ECU)ケースなどでの需要を想定する。2025年央をめどに少量規模の量産を目指す。

     開発したのはPBT樹脂「ノバデュラン」の「ZRシリーズ」。1月にサンプルワークを開始した。特殊な添加剤を原料メーカーと共同開発し、PBT樹脂中にうまく配合することで実現した。

     ポリプロピレン(PP)などの樹脂を発泡させる際は一般に、特殊な射出成形機を用い、成形時に窒素などのガスを注入して内圧を高めるガスアシスト成形や、モルダーが化学発泡材をドライブレンドするなど設備投資や処理が必要だった。

     開発品は、通常行うPBTペレットの乾燥工程を経た後は、成形機に投入するだけで容易に射出成形品が得られる。一般的なPBTのガラス繊維強化系成形品(GF30%含有)の比重が1・5を上回るのに対し、開発品を使用した成形品は繊維強化系の特徴である高い曲げ弾性率を有しながら、半減に近い比重0・8程度が実現可能。耐薬品性や耐熱性といったPBTの基本特性は維持するという。軽量化に加えて、発泡層の形成による断熱性など副次効果も付与できると期待している。

     車の走行時の二酸化炭素(CO2)排出量の削減や燃費向上のため軽くて硬い樹脂需要の高まりを想定して開発を進めてきた。電気自動車(EV)などの金属の機構部品の置き換えをはじめ、各種産業資材など幅広い需要を見込む。発泡させるためには一定の厚みが必要であることから、コネクターやリレーなど小型の電気電子部品には不向きとみている。

     顧客が使いこなせるようになるまでは手厚い技術支援も施す。そのためにも当面は国内で生産し、国内中心に販売する。中国やASEAN(東南アジア諸国連合)、欧米へと徐々に販売地域を広げ、中長期では中国の自社工場での生産も視野に入る。

     三菱ケミカルGは23年4月、三菱ガス化学との合弁会社で手がけていた特殊ポリカーボネート(PC)とPBT樹脂の両事業を分割して吸収し、エンジニアリングプラスチック事業部を発足。平塚工場(神奈川県)に研究開発センターを設け、EV部材や電装部品向けの素材開発体制も整備している。

     PBTの市場は年率4%程度の成長が続くが、競合の台頭も相次ぐなかで差異化品の開発に活路を見いだす。昨今は、ヘッドアップディスプレイなど先進運転支援システム(ADAS)向けの低そりグレードなどで実績を積み上げ、再生材含有品は民生用途で採用が始まり、欧州のELV(廃車)指令を受けて車載関係での評価も進む。
いいね

  • ランキング(資源・素材)