• 籾殻が原料の特殊吸着炭「トリポーラス」
      籾殻が原料の特殊吸着炭「トリポーラス」
     ソニーは、植物由来多孔質材料をPFAS(有機フッ素化合物)の有害物質除去に提案する。籾殻を原料とした特殊吸着炭「トリポーラス」の用途拡大の一環で、土壌・水質浄化への利用を想定。PFOA(ペルフルオロオクタン酸)などカルボン酸系や、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)などスルホン酸系の多物質を吸着し、活性炭を超える99%以上の除去能力を確認した。すでに実績がある衣服用消臭材やボディーソープ、実証試験を進める水質浄化などとともに有望領域と位置づけ、パートナー探索などを推進。早期実用化を目指す。

     トリポーラスは2ナノメートル以下、2~50ナノメートル、50ナノメートル以上の3サイズの細孔を合わせ持つ特殊な炭素材料。従来の活性炭では難しい高分子も吸着可能で、衣服の練込用消臭材、ロート製薬の「デ・オウ」などトイレタリー製品で採用が広がる。2023年には住友商事と共同でバイオ化学品・燃料製造の実証試験を行うなど、多用途展開をまい進している。

     実証試験ではトリポーラスをフィルターに用い、ISO21675規格による吸着特性評価を実施。ペルフルオロテトラデカン酸(PFTeDA)やN-エチルペルフルオロ-1-オクタンスルホン酸アミド酢酸(N-EtFOSAA)など、既存の活性炭では除去率が低い物質も99%以上除去できることを確かめた。

     ソニーはこれまでも逆浸透膜(RO膜)の前処理や気相浄化など実証試験を進めており、有害PFAS除去は新たな有望領域と位置づける。100%バイオマス資源で循環型社会に適した製品であることも訴求する。

     PFASは多用されるポリテトラフロロエチレン(PTFE)などを含め1万種類以上ある有機物質。その中でも有害性を懸念される物質の対策が問題になっている。日本においても土壌・水質汚染などの検査、浄化を行う動きが広がっており、効率的に除去可能なトリポーラスフィルターの需要は高いとみる。

     籾殻は1年間に世界で年1億トン以上、日本でも約200万トンが排出されている。国によっては廃棄の課題もあり、環境汚染の一因として対策が求められている。新材料を資源化手段としても位置づけ、長期的に事業拡大を進めていく方針だ。
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