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  • 中部セラミック大手、水素の社会実装アクセル
  • 2024年4月9日
    • 量産実証用に向けた水素燃焼焼成炉イメージ図(日本ガイシ発表資料から)
      量産実証用に向けた水素燃焼焼成炉イメージ図(日本ガイシ発表資料から)
     中部の大手セラミック各社が「水素の社会実装」に向けた取り組みをスピードアップさせている。昨年3月、いち早く水素燃料による焼成炉の実用化へ量産実証に入った日本ガイシに続き、Niterraグループの日本特殊陶業も水素燃料によるセラミック製品の燃焼試験を今月から本格スタート。ノリタケカンパニーリミテドは、広範な産業界向けに水素燃焼をテストできる試験用水素燃焼式焼成炉を小牧工場内(愛知県小牧市)ヒートテクノ テストセンターに整え、5月から運用を開始する。

     中部地域の産業ガス大手、東邦ガスも6月に実量産レベルの水素供給プラントを稼働させる予定だ。自動車部品のアイシン、デンソー、トヨタ自動車も自動車部品や車体部材の製造時、燃焼や加熱時における水素燃料試験を進めており、わが国の製造業で中心軸を担う中部の水素社会実装が、産業界を牽引している。

     水素充填スタンドでわが国トップの約40カ所を有する愛知県をはじめ、中部地域は早くから「水素の社会実装」が最重要テーマ。産官学が一体となり、水素の利用途拡大に取り組んでいる。中部国際空港(セントレア)の水素燃料フォークリフトの運用拡大、全国に先駆けて主要路線をすべて水素燃料のバスに変えた愛知県豊田市のほか、モビリテイ領域での水素活用は、実質的に関東や関西圏以上に進んでいる状況。

     一方、都市ガスや重油を燃料とする工場や製造所の加熱炉、焼成炉は産業界全体にとって「焼成時に発生する大量の二酸化炭素(CO2)」を抑制するのが大きなテーマとなっている。水素燃料を利用することにより、焼成や加熱炉からの発生CO2を実質ゼロとし、政府が掲げる2050年カーボンニュートラルに貢献できる。中部の主要産業である高機能セラミックス産業が、水素を利活用する産業サプライチェーンの構築に向け、いよいよスピードを上げ始めた。

     日本ガイシは量産設備用水素バーナーの開発も進めており、水素燃焼の量産設備に適用させる考え。セラミックス製品製造時、年間約30万トンのCO2削減につながる。加熱のコア部品となるバーナーでも一層の省エネルギー化が可能な量産設備用水素リジェネレイティブバーナー開発に取り組んでいる。また、日本特殊陶業も、独自に常温1600度Cの高温域に応じる水素燃焼バーナーを開発。ナリタテクノ(愛知県瀬戸市)と共同開発したセラミックス専用のバーナーを使うという。ノリタケカンパニーリミテドは、以前から共同開発を進めてきた東京ガス(東京ガスエンジニアリングソリューションズ)とのリチウムイオン2次電池(LiB)電極材製造時の水素連続焼成炉開発の実績を生かす。自社のみならず産業界全体の水素燃焼試験ニーズに応じるかたちでセラミック製造技術で蓄えた燃焼炉技術をフィードバックし、水素燃焼式焼成炉を開発。広く水素燃焼試験に最適な試験炉として産業界へ訴求する。
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