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  • 日産化学のエポキシ化合物、ISCC PLUS取得
  • 2024年4月23日
    • 小野田工場から出荷されるTEPIC。バイオマスという新しい価値の創出を目指す
      小野田工場から出荷されるTEPIC。バイオマスという新しい価値の創出を目指す
     <注目製品解剖>

     粉体塗料や電子材料向けに展開する日産化学のエポキシ化合物「TEPIC(テピック)」は、サステナブル全盛のいま、新しい価値を加えた。持続可能な製品の国際的な認証制度「ISCC PLUS認証」の取得である。中国品の攻勢で市況が厳しさを増すなか、持続可能性の切り口はユーザーに響くのか。ファインケミカルの代表格である製品の新章が始まろうとしている。

     日産化学のアンモニアチェーンの末端に連なる誘導体として、テピックが誕生したのは1978年。トリアジン環を持つ3価のエポキシ化合物で、耐候性、耐熱性、透明性を特徴とし、粉体塗料の硬化剤をはじめ、電子基板のソルダーレジストインキ、LED(発光ダイオード)の透明封止剤などの電子材料用途で市場開拓を進めてきた。汎用、電材向けの低塩素、高融点をはじめ、近年では液状グレードなど、ユーザーニーズに合わせてラインアップも拡充している「ファインケミカルの基幹品」(化学品事業部の髙田裕之ファインケミカル営業部課長)だ。

     このほどISCC PLUS認証を取得し、マスバランス方式でバイオマス原料の割り当てが可能となったテピックは、もともと原料の一部をバイオマスで代替できる製品だった。いまほどサステナブルが注目されていなかった時期には、時々の市場環境に応じてバイオマス原料をチョイスすることもあったという。

     その特性に脚光が当たったのは、22年末に社内で開催したワーキンググループ。参加した同営業部兼企画開発部の西村仁宏課長は「持続可能性をテーマに当社の化学品に何ができるか議論しているなかで、テピックの存在が浮上した」。認知度が高いISCC PLUSS認証についてセミナーなどに参加し情報を収集し、取得準備を進めてきた。

     テピックはシアヌル酸の誘導体。製造設備の関係からアンモニアからシアヌル酸までは富山工場(富山市)で生産しており、テピックを生産している小野田工場(山口県山陽小野田市)が今回の認証の対象となった。日産化学として第一号の認証である。

     多くの化学品が直面している海外勢の低価格品の攻勢はテピックにも影を落としており、市場環境の見通しは明るいとは言えない。こういう状況において、機能材料としての価値に加えてサステナブルな価値も備えたことは、どのような意味を持つのか。

     粉体塗料用途では、ポリエステル樹脂系塗料に供給している。「窓枠のアルミフレームなどの耐久性、信頼性向上のために使われている」(西村課長)。ここでは中国の競合メーカーと激しくしのぎを削っているが、「現状で競合がICSS PLUSなどの認証を取得した情報は掴んでいない」(髙田課長)。

     <粉体塗料や電子材料分野で期待>

     粉体塗料のマーケットは海外が中心で、テピックも輸出品の位置づけだ。とくに環境問題に感度が高く、無溶剤で低VOC(揮発性有機化合物)を特徴とする粉体塗料に力を入れている欧州塗料メーカーが少なくないなか、バイオマス原料をマスバランスで割り当てられる硬化剤が魅力的に映ることは容易に想像できる。電子材料の世界でもパソコンやスマートフォンといった最終製品メーカーはグリーン調達を推進している。

     「いい製品だと思っている。多くの分野で展開し、長く商売させてもらってきた」(髙田課長)。ユーザーに新たな選択肢を提供できることになった往年のファインケミカル製品が、新時代にふさわしい価値の獲得を目指して動き出す。
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