• 斉藤社長
      斉藤社長
     信越化学工業は2024年度の業績展望で、緩やかながら、反転上昇の基調をつかむ。斉藤恭彦社長は主力の塩化ビニル樹脂と半導体シリコンウエハー両事業について、米国製造子会社の塩ビが春の需要を背景に現地向け値上げに成功し、シリコンウエハーは「品種、顧客ごとに度合いは異なるが調整局面から市場は復調しつつある」との現状を話した。塩ビは今期における価格の維持、修正が課題。シリコンウエハーは中長期視点で緻密な品種、用途構成を構築することが課題となる。

     25日に公表した第1四半期(4~6月)業績予想は売上高5850億円(前年同期比2・4%減)、営業利益1650億円(13・5%減)、経常利益1900億円(12・5%減)、純利益1200億円(21・9%減)。前年同期比では減収減益を予想する一方、直近の四半期(1~3月)と比べた各セグメント利益は、塩ビを含む生活基盤材料が減益。シリコンウエハーを含む電子材料が増益を見込む。

     生活基盤材料の減益は、米製造子会社シンテックの定修が主因。前期末(10~12月)の実施を、プラクマイン工場(ルイジアナ州)で建設している塩ビ新設備に関連して新年度(1~3月)の実施にしたことによる。年38万トンの新設備は予定通り8月に稼働するという。斉藤社長によるとシンテックの米国内販売は好調で1~3月は7%増収。住宅着工件数が130万~150万戸、需要の先行指標の目安となる建築許可件数も140万件台後半で推移し、安定しているとみる。

     斉藤社長は「カ性ソーダ、塩ビは価格が重要テーマになる」と課題を指摘した。米国内での塩ビ供給は「穏やかながら、春の需要があった」ことを追い風に2月以降、値上げに成功している一方、アジア向けはカ性ソーダ市況の上昇を見込むものの、塩ビは内需が低迷する中国からの輸出増で市況が引きずられているため、価格修正に取り組むことが継続課題となる。

     増益予想とする電子材料は露光材料、ハードディスクドライブ向け希土類磁石の回復が鮮明。シリコンウエハーは、メモリー向け300ミリメートル口径品を中心に伸びるとみる。轟正彦取締役専務執行役員は「デバイスの在庫調整がいち早く進んだメモリー用途は需要家の在庫水準が順調に減少している」と指摘。人工知能(AI)向け需要が台頭していることも需要回復の追い風となる。

     今後、本格的な回復を見込む25年以降を見据え、需要家は3カ月強分とみられる現状の在庫を、適正水準の「定説」とされる1カ月分をめどに圧縮するとみるが、2カ月分を適正とする需要家が出てくるとも見込んでおり、需要を底上げする要因とする。

     300ミリメートル口径品が持ち直す一方、200ミリメートル口径品は車載、民生機器・産業用途が低調。150ミリメートル以下の小口径品も厳しい需要動向が続くなど、いずれも回復にさらに時間を要するとみる。このため、200ミリメートル品は熱処理タイプ、車載・通信向け特殊品、パワー半導体用途を中心とする高付加価値品に注力する中長期の事業戦略を描く。小口径品は長期的には減少するとして「品種・用途ごとに今後の方向性を検討することが重要」とした。
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