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  • 北川氏が語るMOF開発 「無用の用」導きに
  • 2025年10月23日
    • 22日開幕した「化学フェスタ2025」で講演
      22日開幕した「化学フェスタ2025」で講演
     日本化学会の秋の学術集会「化学フェスタ2025」が22日、東京都江戸川区船堀のタワーホール船堀で開幕した。会期は24日までの3日間。初日の恒例企画「ノーベル賞解説講演」では、今年のノーベル化学賞を受賞した京都大学の北川進特別教授(理事・副学長)が、自ら受賞研究について分かりやすく解説した。

     今年のノーベル化学賞は「金属有機構造体(MOF)の開発」。MOFは多孔性配位高分子(PCP)とも呼ばれ、気体を孔に取り込み分離・貯蔵できることから、環境やエネルギー問題の解決に貢献する材料として期待されている。柔軟な構造を持つ点が、ゼオライトなど従来型の多孔質物質とは大きく異なる。北川氏はMOFの開発とともに、大量の気体を取り込めることを世界で初めて実証した。

     講演は「MOF化学の開拓と展開―集合、空間、動性の用意された心での歩み」と題し、フランスの細菌学者ルイ・パスツールの言葉「幸運は用意された心にのみ宿る」を軸に、MOFにいたる研究の道のりを語った。密な構造を追求していた際、結晶の間に有機分子が入っていることを発見し、多孔質に目を向けたことが研究の大きな転換点になったという。

     その背景には『荘子』にみられる「無用の用」の思想があった。日本人初のノーベル賞受賞者である湯川秀樹博士が『荘子』の愛読者であることを、京大生時代に読んだ彼のエッセイで知っていた。こうした思想に親しんでいたことが、当時「無用」と思える方向に舵を切る勇気につながったと振り返った。

     研究者に向けては「自ら情報を取って学ぶ姿勢と、疑い、時間をかけて咀嚼する『鈍』の姿勢の重要性」を説き、「素早く技術を受け入れるだけでは優れた改良者にしかなれない」と強調した。

     研究の今後については、一般の人を含めてより多くの人がMOFを知ることで、応用の機会がさらに広がっていくことへの期待を示した。
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