米国・イスラエルのイラン攻撃が、中東地域に営業拠点を持つ化学品大手専門商社の事業に影響を及ぼし始めている。トルコなどでは現状で直接的な被害は確認されていないものの、物流面では一部に停滞が発生。攻撃の応酬が長期化すれば、サプライチェーンに本格的な影響を及ぼす可能性がある。一方、当事国のイスラエルでは現地顧客への影響も大きく、事業活動への懸念が生じている。先行きが混迷するなか、駐在員や現地スタッフの安全を最優先しながら、今後の動向に注視する状況が続きそうだ。
中東エリアに拠点を持つ大手の化学品専門商社は長瀬産業や稲畑産業、森六など。その他の大手商社では阪和興業や加藤産商などが同エリアに進出している。
このうち、長瀬産業はトルコのイスタンブールとイズミールに拠点を置き、化学や医薬品、モビリティ、エレクトロニクス、化粧品、食品産業などの輸出入ビジネスや国内販売、マーケティング活動を推進。ドイツ現地法人の支店としてトルコでビジネスを展開中だ。同社では「現時点で全社業績を左右するような甚大な直接被害は確認されていない」とするものの、「物流の停滞・遅延が多少みられている」と語る。中東地域への当面の出張禁止とトルコへの注意喚起などの対策を講じながら、今後の動向を追うとしている。
また、稲畑産業も稲畑シンガポールの事務所としてトルコのイスタンブールに拠点を構え、合成樹脂や化学品などの販売に注力中だ。現地スタッフ2人が同ビジネスに従事するなか、現状では「退避措置などはとっていない」という。ただ、先行きが不透明なことから、事業活動については「今後の状況を注視する」考えを示した。
一方、より深刻な事態に直面しているのが、イスラエルだ。同国ヘルツリーヤに拠点を構える森六では、主に樹脂に関する原料や素材の輸出入にかかわる事業を展開しているが、「現地の顧客への影響は大きい」という。同国のビジネスでは、ドイツ拠点に駐在する日本人スタッフがイスラエルのオペレーションを担当。3人の現地従業員が活躍している。この現地スタッフについては「全員の安全を確認し、在宅もしくは安全な場所への避難」を指示したという。また、「中東地域・イスラエルへの出張は禁止」するなどの措置を講じている。事業への影響などについては、「現在精査中」という。
このほか、阪和興業は、アラブ首長国連邦(ドバイ)、クウェート(クウェート市)、サウジアラビア(ダンマン)、トルコ(イスタンブール)で事業を手がけている。現時点では「操業や物流、取引への支障は発生していない」とするものの、「人事部から出張自粛の通達を出し、従業員の安全確保に向けた対応」を進めている。
加藤産商も兄弟会社がドバイで不動産投資事業を行っているが、発生している影響については「現時点ではない」と語る。駐在員1人に対しては自宅待機を指示するなど、安全確保に向けた取り組みを徹底している。
<輸出事業、一部停止も>
中東エリアに営業拠点を持たずに同地域でビジネスを展開する商社では、スタッフの安全は確保されているものの、事業に影響が出始めているケースもある。例えば、三谷産業は化学品セグメントで中東方面由来の化学品を輸入するビジネスを展開しているが、「その一部は供給がストップしている事実にあり、その他の物品も今後どうなっていくのかは情報収集している状況」にあるという。また、事業者や個人商店、個人に石油製品やLNG(液化天然ガス)を供給するエネルギーセグメントの事業については「燃料価格は上昇傾向にあることから、もし長期化すれば価格だけでなく製品供給にも影響を及ぼす可能性がある」との見方を示している。