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  • BASF、本社工場のコスト削減上積み 26年末までに10億ユーロ
  • 2024年2月28日
    • ルートヴィヒスハーフェンの不振は構造的なものとみて長期的な位置づけも見直す
      ルートヴィヒスハーフェンの不振は構造的なものとみて長期的な位置づけも見直す
     BASFは本拠地ドイツの業績不振が続いている。独ルートヴィヒスハーフェンに同社最大の生産拠点を構え、2015年にはグループの利益のおよそ3分の1を稼ぎ出していたが、23年は前年に続く赤字となった。ドイツ以外の主要な地域では黒字を確保しており、同拠点の「競争力強化のためにさらなる断固たる措置が急務」(マーティン・ブルーダーミュラー会長)。追加のコスト削減策を実施するばかりでなく、不振は構造的なものとみて長期的な位置づけも見直す。

     23日に発表したBASFグループの23年業績は売上高が前年比21%減の689億ユーロ(約11兆円)、特別項目控除前EBIT(金利・税引前利益)は同45%減の38億ユーロだった。減収は価格と販売量の大幅な減少による。とくに原材料価格の下落から、ほぼすべてのセグメントで価格が下落した。減益の主な要因はケミカル事業セグメントとマテリアル事業セグメント。ケミカル事業セグメントでは、利益率と販売量の減少に加え、持分法適用会社からの寄与も低下した。マテリアル事業セグメントの減益は、主にポリアミドとアンモニアの利益率の低下による。

     特別項目控除前EBITを地域別にみると、欧州以外が29億ユーロ、ドイツを除く欧州が15億ユーロに対し、ドイツは6億ユーロの赤字。需要の低迷により前年の1億ユーロから赤字幅が広がった。ドイツの不振の要因として、需要低迷による販売数量の落ち込みとともに、構造的なエネルギー高による生産コストの上昇を挙げた。ルートヴィヒスハーフェンは同社最大の生産拠点で大量の天然ガスを消費しており、ロシアによるウクライナ侵攻を契機としたドイツでの価格高騰の直撃を受けている。

     BASFは22年にコスト削減プログラムを開始。26年末までにルートヴィヒスハーフェンを中心に欧州の非製造部門で7億ユーロ、欧州以外のグローバル・ビジネス・サービス部門とグローバル・デジタル・サービス部門で2億ユーロ、さらにルートヴィヒスハーフェンではカプロラクタムやトリレンジイソシアネート(TDI)などの生産停止により2億ユーロを削減する。23年までに6億ユーロを実現した。

     加えて今回、ルートヴィヒスハーフェンで26年末までにさらに10億ユーロのコストを削減する方針を固めた。人員削減も辞さない考えで、今後数カ月のうちに詳細を明らかにする。

     ルートヴィヒスハーフェンはBASFにとって最大のフェアブント(統合生産拠点)として、世界へ製品を供給してきた。コスト削減プログラムでは版図を欧州に絞ることにした。不振は一時的なものではなく、構造的なものとみており、BASFは、追加のコスト削減策にとどまらず、ルートヴィヒスハーフェンの長期的な位置付けも見直す。「構造的発展に向けた明確な戦略的方向性を示し、野心的な収益目標を設定する」(ブルーダーミュラー会長)。

     ルートヴィヒスハーフェンの将来像は24年後半に示すとしている。ブルーダーミュラー会長は退任が決まっており、その検討は、中国のリチウムイオン2次電池(LiB)材料大手・杉杉股份との正極材料合弁の設立や、中国・湛江(広東省)でのフェアブント建設など、中国・アジア地域のメガプロジェクトを担当してきたマーカス・カミート次期会長が率いる4月からの新経営陣に委ねられる。
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