• 日本最大のエチレン生産能力を占める京葉地区
      日本最大のエチレン生産能力を占める京葉地区
     京葉地区(千葉県)の石油化学コンビナートが再編に動き出す。三井化学と出光興産によるエチレン設備統合を第1ステップに、住友化学、丸善石油化学を含む4社の地域連携による第2ステップへ移行し「完成形」を目指す。GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債の適用も視野に、リサイクルやバイオ技術を活用した次世代コンビナートへの本格的な検討が緒に就く。2030年をめどとした京葉の最終形では、ナフサクラッカーの2基化が現実味を帯びてきた。

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     京葉地区において、三井化学、出光興産の2社が独占禁止法の制約を受けず、先駆けてエチレン設備の統廃合に動けたのは、10年から折半出資の有限責任事業組合(LLP)を組んできたからだ。10年代前半の石化不況の際、両社はエチレン設備統合まで踏み込んで検討した経緯がある。その後の事業環境の好転で統合話は凍結したが、足下ではエチレン稼働率が19カ月連続で90%を下回る状況。逆風下で統合意欲が再燃した格好で、一時凍結していた統合案を再度引き出し検討を進める。

     両社のエチレン設備の稼働開始は三井化学78年、出光85年だが、生産能力は三井化学年55万トン、出光37万トンと三井化学の方が大きいこともあり、誘導品のバランスなどを考慮し出光の設備を停止する方向で検討。停止時期の27年度は、出光の大規模定修期にあたり、三井化学も経済産業省が制定するスーパー認定の絡みや、配管調整、誘導品の対応で都合のよい年となる。両社の工場は隣同士で配管もつながっているため、構造改革費用は一定額で抑えられる見込みだ。

     三井化学、住友化学、丸善石油化学の3社は昨年2月から、カーボンニュートラルの実現に向け共同で検討してきたが、エチレン設備を持つ出光の参画が待たれていた。今回、出光が三井と集約することで、必然的に出光が陣営に加わることとなる。

     今後の4社連携ではクラッカーの「3基化」を前提に議論を進める。コンビナート全体の留分バランスを加味し、グリーン原料の調達やリサイクルなどの仕組み構築、非化石由来エチレンを用いたポリオレフィンのバイオ化など次世代技術の導入を見据え、GX経済移行債の適用を見込む。実際、出光興産は25年度下期に千葉事業所の隣接エリアで廃プラ処理量年2万トン規模のケミカルリサイクル設備を稼働させる予定。住友化学も30年までに年20万トン級のバイオエタノール由来のエチレン製造設備の建設を検討するなど投資額は格段に膨らむ。

     京葉地区は日本のエチレン生産能力の約3分の1を占める最大地区。三井化学、出光興産のほか、丸善石化(48万トン)、京葉エチレン(丸善石化55%・住友化学45%出資、69万トン)の4基ある。出光と三井化学によるエチレン設備の統合により、4社による次世代コンビナートに向けた検討が本格化する。生産能力のさらなる最適化に向けた議論も緒に就くが、3基でも余剰は解消されない見込みで30年近傍の2基体制が視野に入りそうだ。
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