欧米をはじめ主要国の金利上昇、中国経済低迷の長期化、ウクライナに続く中東情勢の緊迫化など世界は不透明感が増している。スペシャリティケミカル企業を分析する、みずほ証券の吉田篤氏は「原油など原燃料価格が上昇している。化学企業は昨年来のスプレッド(利ざや)改善がようやく奏功してきたところだが、需要が弱いなかで更なる価格修正を実施できるのか厳しい局面になりそうだ」と話す。ただ下期以降、比較的期待できる分野に自動車を挙げ、「世界的にシフトが進む電気自動車(EV)向けの電池材料、車載用半導体材料などをグローバルに展開する化学企業は数量回復が期待できる」と指摘する。

     そうしたなか、吉田氏が注目企業に挙げるのが東洋インキSCホールディングス。国内印刷インキ最大手は来年1月1日に社名を「artience」に変更する予定。「1896年創業の老舗ながら『会社を変革する』という高島悟社長の強い意志が表れている。来年からの新中期計画で事業ポートフォリオ改革の進展が期待できる」と評価。今月から新たにカバレッジを開始している。

     新聞や雑誌などの紙媒体は成熟化し、主力の印刷インキは需要減少が不可避。これに対し同社は顔料や樹脂の分子設計・合成技術、顔料を制御する分散技術を駆使し、FPD用カラーフィルター色材、車載用リチウムイオン電池の正極材に使われるCNT分散体など非印刷インキ事業を次々と花開かせつつある。

     しかし株式市場では印刷インキのイメージが残り、PBR(株価純資産倍率)は1倍に満たない。「非印刷インキ事業のウエートが高まり、従来のイメージが払拭されればバリュエーションは切り上がる」と予想する。CNT分散体は「米国工場で増強中だが、新規顧客を複数獲得しているようだ。同製品の売上高は年率78%の伸びを予想する」と分析する。

     住友ベークライトも注目企業に挙げる。世界シェア4割を占める半導体封止材は、モーター磁石固定用封止材やECU一括封止材といった車載用途が好調だ。「車載用途の比率は22年度28%から25年度38%に拡大し成長を牽引する」と予想する。また半導体一本足ではなく、「医療機器や医薬品用包装資材などクオリティオブライフ関連製品が安定して稼いでいる」ことも評価。「事業利益率とROE(自己資本利益率)で10%を視野に入れるなど、スペシャリティ化が進んでいる」と好材料を指摘する。

     <東証化学関連銘柄 週間株式相場表 10月16日(月)~20日(金)>

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