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  • 公的資金活用の学術論文、オープンアクセス義務化
  • 2023年11月1日
  •  内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(SCTI)の有識者議員はこのほど、公的な研究資金を活用した研究成果に基づいて執筆された学術論文を即時公開(オープンアクセス=OA)する政府方針の「基本的考え方」をまとめた。今年5月、先進国7カ国(G7)の科学技術大臣会合で日本が表明した「2025年度公募分からのオープンアクセス化の義務化」の実効性を担保する。近く、SCTIは本会議を開き正式に決定、必要な制度整備を本格化させる。最新論文のオープンアクセス化は産業界にとっても技術的な視野を広げるうえでメリットが大きい。

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     科学技術の成果は人類共通の財産であり、世界中の誰もがいち早く、その成果物である論文を自由に読むことができるというのが大原則となる。このため日本としても、このグローバルな環境づくりに向け、国内体制を整える。現在の主な論文の国際的な流通は著名な学術誌が担っている。ただ、基本的に論文を読むのは有料であり、論文を掲載してもらうための投稿料もかかることから、研究現場での負担が課題となっている。

     今回、政府は25年度公募の研究から論文のオープンアクセス化を義務化する。論文の無料閲覧の受け皿となるのが国立情報学研究所(NII)の研究データ基盤システムや日本の学会が発行する電子ジャーナルなどを収載する科学技術振興機構(JST)の学術論文プラットフォーム。一方、強力な論文流通網を持つ著名な国際学術誌グループとも手を組む。その手法が大学などと出版社で取り交わす「転換契約」。

     転換契約では有料論文を読むための購読料と論文投稿のための費用、投稿した論文を誰もが無料で読めるオープンアクセスのための費用を、研究者や大学などが出版社に一括で支払う契約。個別に支払うよりも、まとめて支払うことでコストダウン効果を狙う。投稿論文がオープンアクセスとなる数は支払う金額によって変わる。すでに欧米では論文のオープンアクセスの推進と、出版社への支払い額の抑制という両面で効果があるとして導入が進んでいる。今後、日本でも普及していくことが見込まれる。
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