• 環境課題
  • 欧州PFAS制限案 パブコメ5642件に
  • 2023年11月22日
     欧州化学品庁(ECHA)が公表した有機フッ素化合物(PFAS)制限案に対するパブリックコメント(意見募集)が9月25日に締め切られ、最終的な提出件数が50カ国5642件に上ったことが分かった。個人を除く4090件のうち国別ではドイツが最多の1228件、日本が924件で続き、世界的な工業国である2カ国の関心の高さが明らかとなった。パブコメと並行してECHAのリスク評価委員会(RAC)と社会経済性評価委員間(SEAC)で専門家による審議が行われており、今後の議論にどう反映されていくかが注目される。

    【図解】どうなる欧州PFAS制限

     同制限案はドイツ、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの5カ国の提案書をもとにECHAが公表、3月22日から9月25日にかけてパブコメを募集した。途中経過では日本からの提出が多い状況が続いたが、化学工業日報が提出されたパブコメを集計したところ、個人を除いたベースでは最多のドイツが1000件を超え、続く日本が900件台となったのに対し、3位以下はベルギー(285件)、中国(223件)、イタリア(206件)、米国(185件)と300件を下回り、日独が突出した結果となった。

     ドイツはBASF、バイエル、コベストロ、エボニック、ランクセス、メルクなどの化学大手や、自動車大手のフォルクスワーゲンのほか、ドイツ工作機械メーカー協会(VDW)、ドイツ機械工業連盟(VDMA)など業界団体が意見書を提出。日本は化学以外の企業や業界団体からも提出された。

     フッ素化学品メーカーで構成される日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)は「今回のパブコメの5642件は、以前実施されたマイクロプラスチックの制限案に関するパブコメの477件を大きく上回る」と指摘。「日本のステークホルダーが募集の早い段階から意見を提出して頂いた結果、世界中で同制限案や、その影響を広く認知させる結果となった」としている。

     欧州制限案に関する今後の動きは不透明だが、ECHAのRACとSEACのメンバーはそれぞれ6~7人程度とみられる一方、専門家としてセクター別に審議を進めていく考えを示している。5600件を超えるパブコメすべてに目を通したうえで審議を進めることになり、「SEAC案に対するパブコメ募集が始まるのは1年後になるかもしれない」との見方も出ている。

     当初は25年に欧州委員会(EC)の制限案に対する決定が採択され、議会、理事会の承認を経て26年にも制限案が採択されれば、その後18カ月の移行期間を経て猶予期間が設けられた製品を除き規制が始まる見通しだったが、そこからは遅れる可能性も出てきた。

     FCJは新たなウェビナーを企画、11月28日から動画視聴期間を開始する予定。欧州における規制の最新状況、FCJがペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)などすでに規制されている物質を表す呼称と定めた「特定PFAS」に関する説明、欧州制限案のパブコメの結果に関する報告、北米の最新規制動向などを紹介する。
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