• 岩田会長
      岩田会長
     石油化学工業協会の岩田圭一会長(住友化学社長)は25日、都内で今年最初の定例記者会見に臨んだ。90%割れが続くナフサクラッカーの2024年の稼働率について、「改善の兆しもみえはじめ、緩やかな回復を遂げていくのではないか」と期待を込めた。同日、協会はサステナブル社会の実現に向けた石化産業の取り組み概要を公表。「環境価値」の評価基準や制度設計の検討に意欲を示した。

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     23年12月のエチレン生産量は47万7600トンで、クラッカー稼働率は80・4%だった。22年8月以降、好不況の目安である90%を17カ月連続で割り込み、23年通年の生産量は前年比2%減の532万トンと2年連続の減少。1988年以来の550万トン割れとなった22年並みの低水準となった。

     岩田会長は23年を振り返り、「世界、中国経済の低迷、物価高による国内の需要減などが稼働低迷の要因となった」と分析。24年については、先月の4大樹脂生産量で高密度ポリエチレン(HDPE)を除く3樹脂で前月比プラスになったことが「1つのサイン」だとし、「昨年6月を底に回復の兆しがみえている。今年は定期修理を迎える設備が6基あることから実質の生産能力も絞られ、稼働率の上向きを期待したい」と述べた。

     同日、サステナ社会の実現に向けた道筋を示した取り組み概要も公表。協会内にワーキンググループ(WG)を設け、約3年かけて策定したとし、石化産業の役割や、構造転換の時間軸、環境価値の評価基準・制度設計の検討、地域・社会や国際連携についてまとめた。

     岩田会長は24年の協会の重点取り組みテーマとして「サステナ社会の実現があり、意見発信とともに、業界として向かう方向を内外に伝えたい」と言及。とりわけ、化学品そのものの価値に環境価値を加えたグリーンケミカル製品の普及のためにも、環境価値については「何らかのルール作りが必要であり、それを主導していきたい」と抱負を述べた。

     また、ドライバー不足に起因する「2024年問題」に関し、同日、政府主導のフィジカルインターネット実現会議の下部組織である化学品WGが策定した物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画を業界の計画として理事会で承認したことも公表した。
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