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  • ENEOSHD、主要6社体制で再出発
  • 2024年3月1日
    • 宮田副社長
      宮田副社長
     4月にENEOSホールディングス(HD)社長に就任する宮田知秀副社長は、前会長・社長らの不適切行為で損なわれた信頼の回復に努めつつ、経営体制の刷新を断行する。石油精製などを手掛ける事業会社ENEOSとの一体経営を解消し、主要6事業会社を統率する新体制に移行する。宮田副社長は将来に向け、「コスト競争力の高いエネルギーをいかに確保するかが最重要課題」とし、エネルギートランジションへの変革を急ぐ。

     2年連続の不祥事後とあってENEOSHDは、役員の選任に慎重を期し、候補者周辺への聞き込み調査や面談などを実施して人事案を審議した。社長のあるべき姿として(1)カーボンニュートラル(CN)実現に向けたビジネスモデルの構築(2)基盤事業である製油所の安定稼働(3)高い倫理観による取引先や従業員からの信頼獲得-の3点をリードできる人物像を設定。技術畑出身で、合理的判断や行動力を備える「宮田氏は適任」(工藤泰三社外取締役)と判断した。

     宮田副社長自身は、「外資系企業への出向経験があり、多様性ある文化に接してきたうえ、役員としての経験も長い」と自負する。経営体質については「100年以上続いてきた石油産業や石油化学のやり方を、いま求められている社会の変化、エネルギートランジションに対応するよう刷新していく」考え。

     2020年6月から続くHDとENEOSの実質的な事業持株会社体制を解消し、両社社長の兼任もやめる。HD傘下の事業会社にはENEOS、JX石油開発、JX金属に加え、4月からは、ENEOSから分社化される機能材、電力、再生可能エネルギー部門の3社が並ぶ。

     主要6社体制で経営資源を最適配分するポートフォリオ経営を目指す。HD全体を見渡す役職として新たにCFO(財務)、CTO(技術)、CCO(コンプライアンス)、CHRO(人事)を設け、部門間の横ぐしを通す。

     エネルギートランジションに向けた取り組みは最重点課題の一つ。宮田氏は「エネルギー安全保障や災害対応の観点を含め、どのような競争力あるエネルギーを供給できるかを常に検討している」と話す。多様な技術動向を評価・実証し、社会実装への準備を急ぐ。旧来の企業文化から脱却し、「場合によってはアジャイルに進めていく」必要性も訴える。

     事業会社のENEOSは製油所トラブルの削減が目下の課題。4月1日付で社長に就任する山口敦治執行役員は「現場、現物、現実の『3現主義』に基づき、自身の目で把握し、現場の声を聞き、そのとき打てる最善の施策を打つ」構え。燃料油特約店・販売店などのビジネスパートナーとの関係強化にも力を注ぐ。

     JSRから買収したエラストマー事業を母体とする事業会社ENEOSマテリアルは引き続きJSR出身の平野勇人社長が率いる。ENEOSの機能材部門を吸収し、総合的な素材メーカーへと変貌する。
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