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  • AGC、クロアリ増強を年内に判断 27年稼働へベトナム有力
  • 2024年3月12日
    • クロアリ製品の東南アジア事業基盤をさらに強化(AGCビニタイの工場)
      クロアリ製品の東南アジア事業基盤をさらに強化(AGCビニタイの工場)
     AGCは、コア事業に位置付けるクロルアルカリ事業の次期投資を検討する。ベトナムでの一貫体制構築が有力とみられるが、1月に化学品カンパニープレジデントに就任した籾井達夫常務執行役員は、集中戦略地域である東南アジアでのクロアリ能力増強について「今年中に判断を下す」とした。同地域でカ性ソーダ、塩化ビニルモノマー(VCM)、塩化ビニル樹脂をそれぞれ年200万トン生産する体制を築く2030年の長期ビジョンのなかで、27年以降に稼働させるための投資判断を、事業環境の展望を踏まえて決める。圧倒的シェアを持つ同地域でのクロアリチェーンを維持・拡大する次期投資について「おおよその絵は出来上がっている」と見据える。

     化学品カンパニーは24~26年の3カ年で掲げる売上高目標7700億円からフッ素製品などパフォーマンスケミカルズの目標2400億円を差し引いた約5300億円が、クロアリ製品を含む同社のエッセンシャルケミカルズ事業の売上高目標となる。24年の同事業見通しが、国際市況の低迷が続くなどの事業環境を背景に、23年比70億円増にとどまる4300億円程度とするため、25~26年の2年間でおよそ1000億円の拡大を図ることになるが、クロアリチェーンを敷く東南アジアの需要成長を取り込むことで達成できるとする。とくにタイ2工場で25年に稼働予定の増強設備が貢献する。インドシナ半島のクロアリ事業を統括するAGCビニタイで実施する1000億円規模の能力増強で、25年にはカ性ソーダが年94万トン、VCM80万トン、塩ビ85万トンとなる。

     同社は域内のクロアリ製品需要で、すでに7割超のシェアを占めているとみられ、供給能力と販売網が事業基盤となっている。引き続き底堅く伸びる同地域の需要の取り込みへ、籾井プレジデントは「供給能力を具備していくことが方向性の一つ」として、30年を見据え、27~29年の次期3カ年に稼働する次の一手に意欲を示す。

     AGCビニタイで稼働する設備に、インドネシアのアサヒマス・ケミカル(ASC)で生産するカ性ソーダ70万トン、VCM90万トン、塩ビ75万トンを加えると、域内のクロアリ製品総能力はカ性ソーダ164万トン、VCM170万トン、塩ビ160万トンとなり、クロアリ製品200万トン体制へ、あと一歩と迫る。

     次期投資では、塩ビ年15万トンを生産するAGCビニタイのベトナム拠点を、電解設備からの一貫生産拠点にするかが焦点の一つだが、籾井プレジデントは「これから事業を伸ばすには市場を解析し、市況感の見方にメスを入れ直して場所、稼働時期、規模を検討する必要がある」との姿勢。塩ビのグローバル需給動向や産業構造の変化を反映して変わるカ性ソーダ販売先用途構成を織り込む。

     北米の高金利策や中国の不動産不況は塩ビ需要に影響し、その潮目の変化は、需給で価格が変動する塩ビの収益性に直結する。カ性ソーダではインドネシアにおけるアルミナやニッケル精錬用途の台頭が顕著で用途構成が急速に変化。ほかの域内諸国と異なる様相を示すなど「カ性ソーダ、塩ビという主要製品のバランスが変わりつつ」あることを指摘。競合の動きも含め、これらを判断材料に検討を進める。
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