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  • セラニーズ、アセチル利益率25%超へ 新設備生かし川下を拡充
  • 2024年3月18日
    • 酢酸新設備を立ち上げるテキサス州クリアレイク拠点
      酢酸新設備を立ち上げるテキサス州クリアレイク拠点
     セラニーズは、酢酸をはじめとするアセチルチェーン(AC)と、エンジニアリングプラスチックの両輪で高収益体質を構築する。ACは酢酸の生産能力拡大で高まるコスト競争力を武器に川下分野を拡充し、利益率25%以上の事業体を目指す。エンプラ関連は大型買収で20種以上になった製品群を生かし、メディカル関連など領域を広げて商機を獲得し、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で年率10%成長を狙う。出発原料メタノールから一貫して手がける優位性も発揮し、高収益性での持続的成長を実現させる。

     酢酸とその誘導品のACと、エンジニアード・マテリアルズ(EM)と呼ぶエンプラ事業の2つをメインに展開するなか、近年はEMで2021年にエクソンモービルから熱可塑性エラストマー(TPV)、22年にデュポンからナイロンやエラストマーなどを取得、大型買収を相次ぎ実行してきた。スコット・リチャードソンCOO(最高執行責任者)は化学工業日報の取材で、製品群拡大で優位性が高まるEMだけでなく、基礎化学品を含むACも「良好なマージンを確保している」と述べ、両事業で高収益な成長を実現させると強調した。

     AC事業は、基礎化学品である酢酸で、生産能力が年130万トンの新設備を米テキサス州に設け、24年第1四半期末に稼働を始める予定。新プラント稼働で高まるコスト競争力を武器に川下分野を拡充し、EBITDAマージン(売上高に対するEBITDAの比率)25%以上を生み出し続ける事業を目指す。

     供給力拡大で酢酸の販売を強化するとともに、酢酸誘導品の原料としてコスト競争力のさらなる向上につなげる。新プラントの稼働で年間1億ドル程度の収益貢献を見込んでいる。

     誘導品は現状、酢酸ビニルモノマー、酢酸エステルなどの中間体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ビニルアクリル、アクリル酸スチレンといったエマルジョンなどを手がける。今後、「さらなるダウンストリームの拡充、伸長を進める」考え。

     主なターゲット分野は建設、土木・建築、塗料・コーティング。顧客への技術サービスを充実化し、共同で新規用途での採用獲得も狙う。

     ACとEMの一部製品の出発原料になるメタノールは、三井物産との合弁会社が米テキサス州の工場で、周辺プラントから排出される二酸化炭素(CO2)を原料としたCCU(CO2回収・利用)メタノールの生産に乗り出した。年産能力は13万トン。そのメタノールを用いた製品を軸とした環境対応品でも顧客ニーズに応える。

     一方、EMは大型買収で20以上に拡張した製品群を生かし、EBITDAで年率10%成長を狙う。買収後、一元化した基幹業務システム(ERP)をはじめ統合した新体制のもとでの事業運営で効率性向上などを推し進めている。まずは統合の完遂を目指し、コスト削減と運営の効率化で収益性を高める。

     事業強化策の一環で、エラストマーの川下展開として米スポーツ用品メーカーのアンダーアーマーと再生可能な高機能繊維を共同開発した。引き続きハイエンド品を武器に新規製品を創出し成長につなげる。中・長期的に、メディカル関連に重点を置く整形外科領域のインプラント向けなどで製品開発を進め、5年後をめどに実用化を狙う。

     テキサス州のCCUメタノールは石油化学産業などが集積する地域に立地し水素調達の面で優位性がある。現時点で次期増強計画はないが、「つねにさらなる拡大の機会を探索していく方針」(同)。

     セラニーズの23年度業績は、化学品の在庫調整など厳しい事業環境であっても、売上高が前期比13・1%増の109億ドル(約1兆6200億円)、営業利益は同22・4%増の16億ドルだった。今後、CCUメタノールや酢酸新プラントの稼働やエンプラの統合効果を業績貢献につなげ、汎用化学品から機能化学・素材までを手がける総合力で、持続的な高収益、高成長を目指す。
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