【上海=中村幸岳】中国の化学大手・万華化学はは石油化学製品やファインケミカルで積極的な増産投資を継続し、シェア拡大を狙う。とくにウレタン原料ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)ではいずれも世界トップに立った。今年も下期にかけてイソシアネートやポリオレフィンエラストマー(POE)、香料原料の生産設備を相次いで立ち上げる。
先月29日に開催した株主総会で、新プラントの稼働開始見通しを明らかにした。
総会の質疑議事録によると、本社を置く煙台市(山東省)の化工産業園で今年上期、C4(1-ブテン)、CC8(1-オクテン)をコモノマーとするPOEのプラントを立ち上げる。生産能力は年20万トン。
さらに同市の別の工業団地で40万トンのPOE設備に着工しており、25年末までの完成・生産を目指す。POEのグループ能力を年60万トンに高め、自動車内外装部品や接着剤、靴、建材など幅広い分野での需要拡大に応える。
香料原料シトラールの生産設備(年4万8000トン)は今年下期の試運転開始を予定する。
また福州(福建省)の子会社によるMDIプラント増強は、今月末までに完了する予定。現地能力を80万トンに倍増させる。
万華化学の23年末時点のMDI生産能力は計310万トンで世界1位。煙台、福州のほか寧波(福建省)、新疆ウイグル自治区、ハンガリーに工場を持つ(表)。
また同社は昨年4月、中国のTDIメーカー・煙台巨力精細化工の株式を買い増し、同社を連結子会社化。さらに福州拠点でプラントのスクラップ&ビルドを実施したことで、コベストロとBASFを抜いてTDIでも世界トップに躍り出た。
イソシアネート市場を巡っては昨年、欧州と日本で計3基、計40万トン分のTDI設備が停止した。
しかし万華化学はTDIでさらなる投資を計画。MDIも「(福州で)150万トン体制を築く計画もある」と明らかにするなど、攻勢を緩めない姿勢だ。
万華化学は、もう一つのウレタン原料・ポリエーテルも約110万能力を持つ。川下では、主剤のポリオールと、硬化剤であるイソシアネートを顧客の要望に合わせて処方・調合し供給するウレタンシステムハウス事業も手がける。
中国国内ではウレタンの原料から川下にいたるまで他を圧する規模となり、外資大手が持っていたシェアを奪いつつある。