• 4月30日の経営戦略説明会で語る岩田社長
      4月30日の経営戦略説明会で語る岩田社長
     住友化学は先端医療を農薬、半導体に続く第3の経営の柱に育成する。得意の低分子医薬や再生・細胞医薬の知見に予防や診断の視点を加え、新たな成長分野を確立する。再生・細胞医薬では2024年度中に住友化学が主導する格好で住友ファーマと新たな合弁会社を設ける。2035年に売り上げ収益3000億円、中長期で投資収益率(ROI)7%以上の事業群を構築する。

     「化学とバイオ、デジタルトランスフォーメーション(DX)技術を駆使して多様な医療やヘルスケアニーズに応えていく」。岩田圭一社長は4月30日の経営戦略説明会で、10月に新組織アドバンストメディカルソリューションを立ち上げる方針を明らかにした。医薬品の創薬を除く先端医療関連事業を新領域のコアに、診断・予防や医療材料へと展開したい考え。低分子医薬や再生・細胞医薬、核酸・遺伝子など同社が注力するモダリティ(治療手段)の市場規模は20年の75兆円から30年には114兆円へ拡大すると見込む。

     岩田社長は、自社の医薬品開発・製造受託(CDMO)事業は「各社が乗り出している抗体分野と異なり、核酸や再生・細胞といったスタートアップを顧客とする先端分野と、医薬の大半を占める低分子の2本立て」が特徴だと強調する。

     再生・細胞医薬については、子会社の住友ファーマが「世界のトップランナー」との認識で、パーキンソン病を対象に世界初の人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来製品の開発を進め、国内では24年度の承認取得に向け準備が進む。日米双方で一貫した製造・販売・研究体制を構築しており、27年度までに日本での事業化を本格化し、30年代にグローバルで1000億円超の事業規模に引き上げたい考え。

     もっとも、再生細胞は30年以降でないと収益が上がらず、年間100億円近い研究開発費は住友ファーマにとって重荷となる。「当面はコストセンターとなるが、長期的には魅力のある事業」とし、24年度内にも住友化学が過半出資する新会社を住友ファーマと立ち上げ、舵取りする。

     低分子医薬品の原薬・中間体のCDMO事業は国内最大手の地位にある。従来は「単なる製造受託であり、成長産業と捉えてこなかった」が、登録データなど含めて過去の蓄積や知見が生かせることが分かり、1つの成長部門になるとしてその重要性を見直している。大分工場では長鎖核酸(ガイドRNA)専用工場の量産を開始しており、高度化する分子量500以上の低分子でも合成の強みを発揮して「十分、差別化ができる」。主戦場の北米でもシェアを伸ばすべく、企業の合併・買収(M&A)については、「北米の低分子医薬事業が1つのターゲット」とみている。
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