•  【ソウル=中村幸岳】韓国石油化学業界の苦境が続いている。中国の増産を受け、メイン輸出品である合繊・樹脂原料モノマーの荷動きや市況が低迷。足元、エチレン設備は約半数が採算性の目安となる稼働率90%を割り込む状況だ。政治空白が続くなか、業界再編を促すため検討されていた規制緩和政策も宙に浮いている。国内での合従連衡や外資への資産売却に向けた交渉は継続されているものの、事態打開への道筋は見えてこない。

     韓国が中国に輸出する代表的な石化製品は、合繊原料パラキシレン(PX)と樹脂原料スチレンモノマー(SM)の2つ。しかし近年、両製品とも中国の自給率が急速に高まり、供給過剰で域内市況も低迷。これが韓国石化メーカー業績低迷の要因の一つとなった。

     5月初頭現在、SMの韓国FOBは1トン850ドル前後で推移しており、市場関係者によると2020年以降で最も低い水準。あおりを受け、PXとSMの販売ウエートが大きいハンファトタルエナジーズペトロケミカル(ハンファと仏トタルの折半出資合弁)は、今年1~3月期の損失額が昨年上期と同じ規模に膨らんだ。

     製品市況悪化で足元のエチレン設備の稼働率も低い。LG化学は稼働中の2系列がいずれも80%前後。ロッテケミカルは第1系列が定修中であるにもかかわらず、第2系列の稼働率は70%台にとどまる。同社のポートフォリオは汎用品が多く、短期の引き上げは難しい。

     一方、YNCCは3系列とも90%稼働を維持しているもよう。SKグローバルケミカル、S-オイルはフル稼働だが、両社は生産規模が小さい。

     米中通商摩擦による「追い風」も期待外れに終わりそうだ。中国は米国産エタンに報復関税を課す方針だったが、当局は4月末にエタンを報復関税対象から除外したもよう。原料高に伴う中国のエタン炉稼働率低下を韓国勢が補うシナリオは描きにくくなった。

     昨年、韓国化学大手の石化部門業績は揃って赤字に陥ったが、今年はさらに悪化する可能性を指摘する向きもある。トランプ関税の影響で原料ナフサ価格が下がったものの、石化製品需要も弱まっているためだ。

     各社は23年以降、資産売却に向け中東企業と交渉に入ったが、いずれも実現には至っていない。LGケミカルがクウェート国営石油(KPC)と進めていたエチレン設備売却交渉は、今年に入り破談。KPCはこのほど、子会社を通じ中国の化学大手・万華化学に出資した。

     一方、ロッテケミカルはUAEアブダビ国営石油(ADNOC)とプラント売却に向け交渉入りしたもよう。韓国化学業界の関係者によると、国内だけでなくマレーシアやインドネシアの資産も対象とする「聖域なきリストラ」を構想しているという。

     韓国石化業界では23年頃から国内連携や再編機運が盛り上がり、政府もM&A(合併・買収)に関する規制緩和や、高付加価値品投資に対する優遇税制措置などを検討していた。しかし大統領不在(大統領選挙は6月3日予定)が続くなか、具体化の見通しは立っていない。
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