【上海=中村幸岳】韓国の産業通商資源部と石油化学大手10社は先月、国内エチレン能力を最大で約3割削減することで合意した。最大輸出先である中国の能力急拡大にともない、韓国の石化産業は苦境に陥っている。政府は能力削減やファインケミカルへの生産転換を条件に、政策支援を講じる方針。今回の合意を受け、エチレン設備が集積する麗水、大山、蔚山の3地域では設備統合や合併を模索する動きが始まったが、実現には課題も多い。
韓国政府の発表によると、石化10社は計270万~370万トンのエチレン能力削減を目指す。同国の全体能力は年間約1300万トンで、削減幅は全体の20~28%に相当する。各社は今年末までを期限に、事業再編計画を政府に提出。計画が認証されれば、再編実施に当たり政策支援を得られる(表参照)。
現地では、蔚山でのSKジオセントリック(SKGC)とKPICの連携、麗水でのGSカルテックス、LGケミカル、ロッテケミカルの3社連合、大山でのロッテと現代オイルバンクの設備集約、さらにはロッテとYNCCの合併などの可能性が報道されている。
しかし業績や製品の競争力、製油所からの一貫体制の有無など企業ごとに置かれた状況は異なり、また現時点では再編計画への政府関与は薄いもようで、具体化には難路が予想される。
例えばKPICは今年7月に韓国で唯一、石化事業が黒字となり、自己資本負債比率も30%前後と経営は健全。市場関係者によると誘導品も差別化され、ポリエチレンは電池材料向けが好調のようだ。さらに競争力のある中東産ナフサの輸入拡大を見据えタンクを増設するなど、独自路線で収益力強化を図っている。こうした状況下、SKGCとの連携には踏み切りにくいとの見方が強い。
またロッテとYNCCは、エチレン2位・3位連合とはいえ両社は製油所を持たない。能力削減が要請されるなか、合併による規模の効果も働きにくい。
今年1~6月期の大手の業績をみると、LGケミカルの石化部門の営業損益は1468億ウォンの赤字に転落。ロッテケミカルも2449億ウォンの営業赤字だった。YNCCは今年に入り、運転資金確保のため親会社に借り入れを要請するなど経営状態が悪化している。
足元、各企業は国内外石化事業の売却を急いでいるが、アジア太平洋地域の石化産業の平常化が2030年頃にずれ込むとの見方もあるなか、中東勢を含め買い手がつかない状況。
またサウジアラムコと同社傘下のS-オイルは来年9月、蔚山で原油処理・化学一貫プラント群の商業運転を開始する。エチレン能力は年180万トン。プロピレンを含めオレフィンを相当量外販するため、国内市場への影響は不可避だ。
韓国にとって石油化学は基幹産業の一つ。同国化学工業協会(KCIA)によると、国内総生産の約6%を占める(23年実績)。政策支援の基準も明確ではない状況下で再編合意は容易ではないとみられるが、状況は切迫しており、残された時間は少ない。危機打開へ政府が関与を強め、事態が急速に進展する可能性もある。