化成品工業協会(化成協)は5月の役員改選で、大日精化工業の高橋弘二社長を新会長に選出した。高橋氏は2017年度に化成協会長を務めており、2度目の登板は化成協として初となる。化学業界を取り巻く環境が大きく変わる中、どのような活動に力を注ぐかを聞いた。
□…新会長の抱負を。
「ここ数年で化学業界を取り巻く環境は大きく変化し、極めて複雑化している。内需の減退や国際的な供給過剰、脱炭素への対応、人手不足や物流の逼迫、規制の強化といった課題が重なり、会員各社は日々、多面的な経営判断を迫られているのが実情だ」
「そうした中にあって、化成協には会員企業に寄り添い、適切な支援策を提供することが強く求められている。化成協は中小の化学企業の比率が高く、より柔軟で実践的な取り組みが重要だ。会長として『会員のために』をモットーにして、会員企業と対話を重ねながら有効な支援活動を展開し、日本の化学産業の基盤強化につながるよう全力を尽くしていく」
□…変化の激しい時代にあって、日本の化学企業にはどのような構えが求められますか。
「第一に戦略的な選択と集中が不可欠になる。コモディティー(汎用品)分野における価格競争は残念ながら避けられず、そこに依存し過ぎるビジネスモデルは今後益々リスクをはらむ。高付加価値なファイン・スペシャリティ領域では日本企業の強みである品質や安全、技術対応力といったものが引き続き差別化要因になるだろう」
「持続的な成長の前提としてサステナビリティへの対応も非常に重要と考えている。脱炭素化、資源循環、化学物質管理といった分野での社会的責任が企業価値に直結する時代になった。これらを負担と捉えるのではなく、むしろ新たな価値創造の起点と捉え、自社の経営資源と照らし合わせた対応策を講じるべきだ」
「さらにグローバル市場の変動や不確実性への耐性を高める上では、情報収集力と迅速な意思決定力、サプライチェーン(供給網)全体でのリスクマネジメント体制の強化が求められる。化学産業はいぜんとして日本経済の中核を担う存在だ。だからこそ『守り』と『攻め』の両輪で持続的な成長戦略を描く必要がある」
□…化成協として25年度はどのような活動に取り組んでいきますか。
「一つは法規制・通商への対応・支援。日本の化学物質審査規制法(化審法)や労働安全衛生法、欧州のREACH規則、POPS規則(残留性有機汚染物質に関する規則)など国内外の規制強化にタイムリーに対応し、最新情報の提供や講演会などを通じて、主に中小の化学企業の実務をサポートしていく」
「二つ目が人材育成の強化・多様化。とくに会員企業の若手・中堅社員を対象とした教育機会の提供を重視しており、25年度は過去最多の35講座、59回のセミナーを計画している。現場の安全意識を高める体験型研修『KYT』や会員企業に直接出向く出張研修も継続実施する。三つ目が物流・取引適正化。いわゆる『物流2024問題』への対応として化学業界6団体で自主行動計画を策定しており、適正な取引慣行や長時間労働の是正、コスト負担の見直しといった課題に業界全体で取り組んでいる」
「最後が情報発信と意見交換の場づくりだ。メール配信やウェブサイト、定例の理事会、懇談会などを通じて会員企業の声を吸い上げ、共通課題を迅速に反映できる双方向の関係性を一層強化する」
□…他の化学関連団体などとの連携については。
「化学業界を取り巻く課題は1団体の枠にとどまらなくなっている。化学業界6団体、関西化学工業協会、学会、行政とも連携し、共通課題の解決に向けた情報共有や政策提言に参画している」
「例えば、危険有害性情報の通知制度などについて、経団連のワーキンググループに日本化学工業協会の推薦委員として化成協のメンバーが出席し、製造・使用者の立場から意見を述べ、厚生労働省の制度設計に反映された。化学品物流や適正取引などの分野では合同グループの設置、アンケート調査やガイドライン作成を通じて実効的な成果を挙げてきた。今後も化成協の独自性を重視しつつ、他団体と協働すべきところでは積極的に参画する方針だ」
□…3年後の28年に創立80周年を迎えます。
「77年の歴史を重ねる中、化成協は常に時代の要請に応えるべく進化してきた。94~04年頃の厳しい時代には自らの組織や財政基盤を大胆に見直し、東日本大震災で中小の化学企業がサプライチェーンで果たす役割の重要性を再認識した12年以降は中小の化学企業の支援強化に大きく舵を切った」
「化成協としても『攻め』と『守り』の視点を併せ持ち、今後も現場の声に寄り添った支援を継続する。将来に向けて化学業界の中小企業支援の中核団体としての位置づけをさらに確かなものとすべく、着実な歩みを進めたい」
(聞き手=小林徹也)